オーバーロード編
第33話 ひきちぎれた
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咲は光実の左手首を掴んで表に出した。光実の手には、多くの低ランクロックシード。
「ねえ、何でこんなの持ってるの」
これだけの数のロックシードがあれば、どれだけインベスが召喚できたか。そのインベスがどれだけの騒ぎを起こしたか。それを考えた咲は、荒れる感情をぶつけることしか頭になかった。
「これで! 何! しようとしてたの!」
咲が問い詰めても、光実はくっくっと笑うばかりで答えようとしない。
だがこの展開には、聴衆のほうが声を上げた。
「あれ、怪物を呼び出す道具じゃないか!?」
「やっぱりビートライダーズが怪物を!」
「騙された!」
しまった、と後悔しても遅い。光実を止めることにばかり夢中で、衆人環視なのだと忘れていた。
せっかく集まった聴衆が散り散りになる。逃げて行く。舞台を降りていたザックやチャッキーたちが止めようとしても、誰も耳を貸そうとせずに。
やがてステージには咲たち以外、誰もいなくなった。
その様子に呆然とする舞は、課外授業の一環で観た演劇の、神託を伝えられなかった巫女役の姿を思い出させた。
何より恐ろしいのが、光実が勝ち誇った笑顔を浮かべていることだった。
(分かってたんだ。あたしたちが止めても、集会がメチャクチャになること、光実くんは分かってて!)
「ミッチ…! どうして!?」
チューやんが光実を離した。その光実に舞が詰め寄った。舞が肩を掴んで揺さぶっても、光実の笑みは揺るがない。
「……これでもう、ビートライダーズの言うことなんて、誰も信じませんね」
それはいつも明るい光実の声からは程遠かった。強いて言うなら、咲がたまたま見た、ヘルヘイムの証拠隠滅を指揮していた時の声に近い。どこまでも、低く、暗い。
舞の手が光実の肩から離れる――が、光実は舞の両手を引き留めるように握った。
「ひ…っ」
「だから、ねえ、舞さん。もうこんなことやめましょう? どう訴えたって誰も信じないし、信じられたって困るだけでしょう? 舞さんには彼らを救うだけの力はないんですから」
「っ、それ、は、そう……だけど」
「このままでいましょう。僕らの言葉が向こうに届かないように、向こうだってこちらには干渉できないんだ。だぁれも入って来れない僕らだけの楽園で、踊って、楽しくやっていきましょうよ」
光実は舞の手を離し、すばやくその両腕で舞を抱き寄せた。
これには咲たちも唖然とさせられた。光実がそういった意味で舞を慕っていたのだと、この時、咲は初めて知った。
「舞さんは何もしなくていいんです。ただそこにいて、笑顔で、幸せでいてくれさえすれば」
どん!
舞が、光実を、突き飛ばした。
「あ
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