第十七話 父親
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ま、それに答える。
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「それはね・・・僕達が参加したこの前の任務あったよね?あれがそもそも、“囮”だったんだ。」
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「へ?どういう事・・・」
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「つまり、国境際での中規模の戦闘、その陽動の間に、橋の調査をする僕達の任務、それら全部が、サクモさん達の極秘情報回収任務の“囮”だったんだよ。その二重に張った“囮”で、岩隠れの視線を外そうとした。・・・でも、失敗した。あの時の被害は、前線の8個小隊中6個小隊が壊滅、潜入調査を行った3個小隊中1個小隊が壊滅。そして、極秘任務の失敗。何故か、分かったかい?」
僕達は、ただ、黙るしかなかった。何も言うことは出来ないし、その権利もないだろう。言い出しっぺのカタナは、それを誰よりも強く感じているかもしれない。
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「ごめんね、いい話ではなかったね。でも、ちゃんと知っていて欲しかったんだ。・・・真実を。それに・・・サクモさんは、確かに、里に大きな被害を出したかもしれない。でも、彼は、仲間を見捨てたくなかった。どっちが正しいのか、分からないけど。君達に仲間を見捨てるような“忍”になっては欲しくない。そう・・・思う。」
隊長の目は、強い決意のような色が見えた。僕も、そう思う。横にいる二人を見る。うちはカタナ、菜野ハナ、2人を見捨てる事なんてしたくない。絶対に。
その後の、報告書作成の話は淡々と進み、短い時間で終わった。誰も余計な事を言う事もなく。帰る時でさえ、皆の口数は少なかった。ただ、「また、明日・・・」という言葉だけ呟いて、皆帰って行った。
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稲荷神社へと帰る道、夕日が土の地面を赤色に染めていた。その道の脇にある商店では、店主と買い物客がまさに、サクモさんの噂話をしていた。僕は、それを聞く事なんて出来ずに、走り出した。道なんて見ていない。ただ、むしゃくしゃに走った。色んなものを、落としたかったのかもしれない。やがて、走るのに疲れて、立ち止まる。周りを見ると、稲荷神社とは全然別の方向、公園の方に来ていた。それだけなら、特に何も思うことなく、踵を返していただろう。でも、その公園には、それをさせない光景があった。それは、公園のベンチに、一人の5,6歳くらいの男の子が膝を抱えて座っている光景。白いツンツンした髪を持つ子供の。
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「カカシさん・・?」
自分でも気づかなかった内に、声を掛けていた。彼は、その声に反応して、顔を挙げた。その顔は、何かを“失った”ような顔をしていた。
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「?・・カカシでいいですよ、イナリさん。おかしいでしょ、やっぱり。」
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「僕も、イナリでいいよ。」
二人で、そう言いあった。お互いに、お互いが遠慮するように。僕は、彼が座っているベンチに腰掛けた。
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「あの、その・・・」
僕が、何を話そうかと言いよどむ。それを、先読みしたように、彼が遮った。
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