暁 〜小説投稿サイト〜
Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
[1/17]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 一面に畳の敷き詰められた修練場、道着と黒い袴を着込んだ衆人環視の中、二人の少年が対峙している。

「――どうした、蘇峰(そほう)? さっさと終わらせようぜ、これから風紀委員の仕事があるんだ」

 片方は、嚆矢。開手の構えで、相手のあらゆる動きに対応出来るように。

「まるで、勝つ事前提みたいな言い方ですね。ご心配なく、対馬さん。直ぐに終わりますから……」

 対する、長めの黒髪の中性的な美少年は、『蘇峰 古都(そほう みやこ)』。二年生の、強能力者(レベル3)
 やはり開手の、鏡に映したかのように対照的な構え。

「何だよ、蘇峰……それじゃあ、まるで俺が負けるみたいじゃねぇかよ?」
「あれ、そう聞こえませんでしたか? っかしいなぁ、そう言ったつもりだったんですけど?」

 別に試合ではないので、互いに挑発し合う。これがもし試合なら、指導が入るところだ。
 そして、静寂が訪れる。畳の藺草と、汗の匂いが染み付いた修練場の空気が、二人の戦意に動きを止める。誰か喉が、ゴクリと鳴った。

「「――――――――!」」

 その刹那、嚆矢と古都が互いに動いた。同時に襟首を掴み――――先に嚆矢が古都の重心を掴み、足を払った。

「――――ッ?!」

 嚆矢は舌打つ。古都の体は、まるで巌。微動だにしない。それどころか、全力で蹴ったはずの己の足の方が跳ね返された。
 同時に、上半身が回転させられる。後は叩きつけられてしまえば、敗けだ。

 それを、わざと流れに乗る事で、一回転して着地。腕を払い、距離を取る。

「流石だな――――『質量操作(マス・オペレーション)』。自分の質量を増やすだけじゃなくて、まさかこっちの質量を同時に軽減してくるとはなァ、またレベルを上げたか!」
「そちらこそ、『制空権域(アトモスフィア)』……対貴方用の短期決戦技だったんですけど、見事に理合を外された。相変わらず、貴方の『手が届く範囲(フィールド)』では戦いにくい!」

 好戦的な笑顔を見せ始めた嚆矢に、苦笑いを見せた古都。その超能力(スキル)は、『強能力(レベル3)』の『質量操作(マス・オペレーション)』。触れている物の質量を操る能力であり、順当に行けば『大能力(レベル4)』も近いと言われる能力である。
 見た目は変わらないが、今の古都は優に百キロを越えており――嚆矢は、最早一キロもない。

――上等……このくらいの逆境じゃなきゃ、面白くねェンだよ!

 普通なら、もう勝負にもなるまい。しかし――嚆矢は、その状況にこそ戦意を昂らせた。
 後輩の努力と工夫に、最大限の敬意を示す為に。脚のバネを最大限に使い、まるで、放たれた『矢』の如く距離を詰める。

「フゥ――――」

 慌てる事なく息を吐き、古都
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ