第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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一面に畳の敷き詰められた修練場、道着と黒い袴を着込んだ衆人環視の中、二人の少年が対峙している。
「――どうした、蘇峰? さっさと終わらせようぜ、これから風紀委員の仕事があるんだ」
片方は、嚆矢。開手の構えで、相手のあらゆる動きに対応出来るように。
「まるで、勝つ事前提みたいな言い方ですね。ご心配なく、対馬さん。直ぐに終わりますから……」
対する、長めの黒髪の中性的な美少年は、『蘇峰 古都』。二年生の、強能力者。
やはり開手の、鏡に映したかのように対照的な構え。
「何だよ、蘇峰……それじゃあ、まるで俺が負けるみたいじゃねぇかよ?」
「あれ、そう聞こえませんでしたか? っかしいなぁ、そう言ったつもりだったんですけど?」
別に試合ではないので、互いに挑発し合う。これがもし試合なら、指導が入るところだ。
そして、静寂が訪れる。畳の藺草と、汗の匂いが染み付いた修練場の空気が、二人の戦意に動きを止める。誰か喉が、ゴクリと鳴った。
「「――――――――!」」
その刹那、嚆矢と古都が互いに動いた。同時に襟首を掴み――――先に嚆矢が古都の重心を掴み、足を払った。
「――――ッ?!」
嚆矢は舌打つ。古都の体は、まるで巌。微動だにしない。それどころか、全力で蹴ったはずの己の足の方が跳ね返された。
同時に、上半身が回転させられる。後は叩きつけられてしまえば、敗けだ。
それを、わざと流れに乗る事で、一回転して着地。腕を払い、距離を取る。
「流石だな――――『質量操作』。自分の質量を増やすだけじゃなくて、まさかこっちの質量を同時に軽減してくるとはなァ、またレベルを上げたか!」
「そちらこそ、『制空権域』……対貴方用の短期決戦技だったんですけど、見事に理合を外された。相変わらず、貴方の『手が届く範囲』では戦いにくい!」
好戦的な笑顔を見せ始めた嚆矢に、苦笑いを見せた古都。その超能力は、『強能力』の『質量操作』。触れている物の質量を操る能力であり、順当に行けば『大能力』も近いと言われる能力である。
見た目は変わらないが、今の古都は優に百キロを越えており――嚆矢は、最早一キロもない。
――上等……このくらいの逆境じゃなきゃ、面白くねェンだよ!
普通なら、もう勝負にもなるまい。しかし――嚆矢は、その状況にこそ戦意を昂らせた。
後輩の努力と工夫に、最大限の敬意を示す為に。脚のバネを最大限に使い、まるで、放たれた『矢』の如く距離を詰める。
「フゥ――――」
慌てる事なく息を吐き、古都
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