第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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遮り、黒子は彼に背を向けた。まるで、その全てを否定するかのように。
そんな事にも気付かないような程の朴念仁ではない。しかし、最早、ここまで来れば引き留める方法など持ち合わせてはいない。
「そっか……じゃあ、初春ちゃんは俺が送ってくから、安心しといてくれ」
「…………ええ。お任せしますわ」
その上での一言に、『風邪気味の飾利を心配していた』黒子は振り返る事もなくそう答えて……
「因みに、最終戦ではいきなり綱を離した常盤台の面々に意表を突かれて……気を逸した瞬間に、御坂の電撃で皆が戦闘不能になって負けたんだ」
空間跳躍により、その姿を消した。
「……流石に、これはカッコ悪すぎたかな」
ふう、と溜め息を吐きながら、嚆矢はにへら、と飾利に肩を竦めた。
当然、辺りからは白い目線が向けられているのを感じながら。
「……いえ。そんなこと、ありません。あの、その……けほ、格好よかったです」
それでも、優しい彼女はそう答えてくれたのだった。
………………
…………
……
飾利を送る為、共に歩く。しかし、少し前のように会話はない。ただ、探るような息遣いだけ。
「…………」
それに、全てが集約されている。やたらと熱っぽい吐息、ふらつく足。紛う事なく――風邪である。
――ここまで来ると、浮かれてた自分をブチ殺したくなる。どうみても風邪気味の初春ちゃんを、見逃してた自分を。
虚ろな目に頬を林檎色に染めた彼女に、罪悪感が湧く。こうなれば、最早仕方あるまい。
「……初春ちゃん、ゴメンな」
「ふぇ――ひゃうっ?!」
と、有無を言わさずに抱き上げる。このままでは、不味い事になると判断した為に。
その方法は勿論、言わずと知れたお姫様抱っこである。
「俺如きで悪いけど、少し我慢してくれ。近くの病院まで、最速で突っ走る」
「あ、あうあう〜」
それに、ポカポカと直角に曲げた腕で殴り付けて抵抗する飾利。勿論、その程度では彼には抵抗足り得ない。
平然と、『あの世の予約をキャンセルする』と評される、とある両生類に似た顔の懇意の医師の医院まで運ぼうと両足に力を入れて。
「……初春に対馬さん? 何してるんですか〜?」
「っと、佐天ちゃんか」
「さっ、佐天さん?! 違っ、これはあの、佐天さんが考えるような事じゃ断じてなくて!」
「ふ〜ん……ふ〜んふ〜ん」
そこに、何処から沸いたのか、涙子が現れた。いや、どうみても隣の『セブンスミスト』……衣服の量販店に来たのだろうが。
彼女は、現在の嚆矢と飾利の状態を繰り返し、大体三回くらい見て。
「なるほど〜、親友の誘いを断ってまで、対馬さんのラヴコールを優先した訳だ〜
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