第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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クワクしますね――きゃ!?」
と、交差点に差し掛かった瞬間――――脇の歩道から出てきた男子生徒と飾利がぶつかった。
「っと……大丈夫か、初春ちゃん?」
「あ、は、はい……けほっ、ありがとうございます」
倒れそうになった彼女の手を引き寄せる。余りに軽すぎて、勢い余って抱き寄せる形になってしまったが。
随分とひょろい、末成り瓢箪のような眼鏡の少年だったが……まだ小学生でも通用する体格の飾利にとっては、十分に大柄である。
「チッ――」
と、少年は忌々しげに舌打ちして歩き去ろうとする。その目には、ただ『ぶつかった』程度のものではない――憎しみの色があった。
「ちょっと、貴方! 人にぶつかっておいて何ですの、その態度は!?」
「……はぁ? お前らこそ、風紀委員ってのは駄弁りながら歩くくらい暇なのかよ? 世の中、爆弾魔事件で騒がしいってのに男連れで」
「な、何ですって……!」
赤髪の少年は、黒子に皮肉を返す。その物言いに、何よりも友人を蔑ろにされた事に、激昂し――
「――いや、誠に申し訳ない。此処は一つ、俺の頭で勘弁してくれませんか?」
それを遮り、黒子と少年の間に立ちはだかった嚆矢。いつもの人懐こい笑顔で、へこへこと頭を下げながらそんな事を宣う。
「なっ――対馬さん、貴方むぷっ!」
「すみません、『部下』にはきちんと、言って聞かせておきますから」
反論しようとした黒子の桜色の唇に人差し指を当てて、黙らせる。上司としての権力で。
その上で、もう一度深く頭を下げた。
「……はっ、はははは! なんだ、少しは弁えてる奴も居るじゃないか。女の前だからって格好つけるかと思えば、ちゃんと社会常識をさ! 分かった、今回だけは許してやるよ、風紀委員……だけど、次はないぞ!」
「はい、それはもう。本当にすみませんでした」
下げた頭を、枯れ木のような腕の先の掌がぱしんと叩いた。それでも尚、嚆矢は平然と。少年が笑いながら、横断歩道の向こうに消えるまで頭を下げ続けた。
「……いやぁ、鬱屈した奴にはやっぱり、これが一番だな。下手に出りゃ、自尊心を勝手に満たしてくれるんだから」
漸く頭を上げ、そんな風に笑った。そんな彼に。
「――――」
「…………」
苦虫を噛み潰したような、何とも言えない表情をした黒子と、申し訳なさそうに縮こまった飾利が残る。
そんな二人に、何でもなさげに嚆矢は笑いかけた。今しがたの無様など、何一つ歯牙にも掛けず。
「さて、どこまで話したんだったっけ? 確か、第三試合を――」
「いいえ――結構ですわ。私、これから『虚空爆破事件』を調べてみますので」
それを
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