第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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「勧誘サボるからだろ、ウチは新入生歓迎で頑張ったからな」
「それを言われると弱いのぜ」
「なんだな」
何の気無しの、ありきたりな会話。しかし、学生生活における最も大事なものは、そう言うものだろう。
坂を下り、分かれ道に差し掛かる。ここからは、道が別だ。
「じゃ、俺はこれから美少女風紀委員と青春を謳歌してくるわ。お前らは野郎二人で精々楽しんできてくれ」
「はん、固法に嫌われてる分際で煩いのぜ」
「その固法のメアドを俺経由でゲットしといて、未だにメール一つ出来てない奴が何を言う」
「ぜぜぜっ!? な、何でそれを!!」
軽口に返る軽口。慌てた主税は、思わず竹刀を振り回す。嚆矢は、それに触れぬよう回避した。
彼の『能力』から逃れる為である。
「第一、相手は固法じゃねぇよ。このこの娘達だな」
「どれどれだぜ……」
「どれどれなんだな……」
携帯のカメラから、保存した画像を見せる。飾利に涙子、黒子の写真である。
それを見て、主税と間蔵は渋い顔をして見詰め合った。
「まぁ、美少女だとは思うのぜ……けど、流石に中坊はあれなのぜ」
「詰まるところ、コウは相変わらずロリコンなんだな」
「ロロロ、ロリコンちゃうわ! 俺はただ、将来性に賭けてるだけで」
自分でも多少気にしている核心を突かれ、絵に掻いたような慌て方をした嚆矢。
因みに、間蔵は年上好きである。蛇足な補足。
「「分かってる分かってる」」
「分かってねぇだろ! おい待て、オーイ! テメーら覚えとけよ!」
話は終わりだとばかりに足早に去っていく二人に、後ろから怨嗟の声が響いたのだった。
………………
…………
……
コツリ、と。検問を通り抜けた男は革靴を鳴らす。学園都市に入る為の検閲は煩雑を極め、元より短い彼の堪忍袋の緒を限界まで引き延ばしていた。
真夏にも関わらずアルマーニのトリプルのスーツを完璧に着こなす、白髪の混じるオールバックの壮年の紳士は、夏日の下では病的にすら見える白い肌を怒りに青褪めさせつつ苛々と懐中時計を見遣る。
「遅い……約束の時刻を二分十七秒過ぎている。全く、コレだから|日本人は」
まるで逆の動きをしているかのようにぎこちない、白い手袋を嵌めた腕の動きで懐から葉巻を取り出し、専用のカッターでやはりぎこちなく片方の端を切り飛ばす。
「仕方無いのよ〜。農耕民族は季節を大事にしますので、のんびり屋さんなのさ〜」
その葉巻に火を付けたのは、いつの間にか隣に立っていた……ぽやんとした紅い髪の、褐色の肌にインドのサリーを纏った少女。その指先に浮遊する、紅蓮の炎の塊によって。
その紳士を見て、一人の男が首を傾げた。そして自分も煙草を吸うような仕草を試し、何
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