第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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ろ。確かに『今の』俺は『対馬嚆矢』だが……真名は別の名前なんでな」
『______』
そう、決して偽りではない。だから、『契約』は有効である。悪いのは、『対馬嚆矢』の言葉を鵜呑みにした『星の吸血鬼』の方なのだ。
更に、新たな誓約を刻まれた。もう、これ以降、『星の吸血鬼』は嚆矢の真名を知ろうとはできない契約となった。
『……クク、マサカ、ココマデトハ、ナ。認メヨウ、嚆矢……貴様ハ、我ガ伴侶、ニ、相応シイ』
「そりゃあ、どうも。化け物にそう言われてもちっとも嬉しくねェけど」
ニタリと笑い、『俊足』のルーンを刻む。こんな化け物よりも、今は飾利の事が心配だった。
『サテ、デハ、我ガ伴侶、ヨ。我ハ、何ヲ為セバ、良イ?』
やっと背中から剥がれた『星の吸血鬼』が耳元で忍び笑う。
命令は、只一つだ。
「この事件を起こしてるクソッタレを見つけ出して、俺に伝えろ。間違っても、何もするな」
『クク、承知、シタ』
その命令と共に、すぐ脇にあった不浄の存在感は消え去り……手元の悪意だけが、ザクザクと正気を削るだけとなった。
「っあー……良い風だなぁ。うん」
蒼穹を吹き渡る風を浴びながら、襤褸の黄色い外套の少女は天を仰いで寝転がる。
手を伸ばせば白い入道雲が掴めそうな程に近く、薄い月は遥か彼方。
「ここは、故郷を……思い出すよ」
地上数十メートルを行く涼風に翠がかった銀毛を遊ばせ、風力発電装置の上に寝そべった彼女は『月が、乱立する縮尺の狂った塔の前や後ろを過る』という――この地球とは物理法則の異なる、星団を幻視していた。
夏の強い陽の光に細められた切れ長の、故郷の二つの太陽と同じ白金の瞳が倦怠に微睡む。
廻り、軋む風車の音は、まるで子守唄。ならば、それを廻す風は強き父の腕にして、優しき母の掌による愛撫。
星辰の巡りにルルイエの館で死の微睡みに夢見る大いなる者や、ハリ湖で眠ると言う名状しがたき者もこんな心持ちであろうか、等と取り留めの無い事を想いながら。
「――――っ」
それまで全ての風を心地好さそうに受けていた少女が、右手で外套を口許に寄せた。
それは正しく、好ましくない臭いを嗅ぎ分けた仕草である。
「臭い――――汚物に集る妖蛆の臭いだ」
刹那、少女はある一点を見遣る。風と人の流れが乱れた、遠き地面の一点を。
「ツイてるなぁ、いきなりアタリじゃん」
それまでの倦怠が嘘のように、彼女はすくりと立ち上がる。
「――――__________!」
何かを呟いた彼女。しかしその言の葉は、呼応するよ
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