第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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ながら『妖蛆の秘密』の頁を捲る。
人外の深遠を垣間見ながらの、前から来る客を躱す障害物走。まるで歓喜するかのように蠕動する狂気の書物は、文字自体が蛆虫のようにのたくって見える。
『______』
「こンの早漏野郎、ザリガニ臭ェ息掛けてンじゃねェ――――!」
やがて忍び笑いは明確な興奮へ、響き渡る哄笑へと。そして、背中全体と首筋に吸い付いた『何か』の抱擁を感じる。
そこで、やっと望みの頁に行き当たった。瞬間、『探索』のルーンを起動して素早く目を走らせ、望みの文言を捜査する。
猶予は、首筋に感じる牙の感触からして、あと数秒だろう。そして――その牙が、肌を突き破る刹那。
「――汝、『星の吸血鬼』! 見えざる伴侶よ……交わされた盟約の元、我に叛くべからず!」
その一節、何とか読み解いた、『呼び出したもの』の名を詠んだ。即ち、真名の支配を。強制的な誓約を刻んだ。
ギロチンの刃が墜ちる刹那のように、生きた心地など消え失せる。
『__ガ、__喚ビ__、タ、者カ』
刃が、首筋に触れたまま止まった。代わり、聞こえたのは掠れた……酷く発声に向いていなさそうな喉から響いたような声。
『貴公ガ、我ヲ、喚ビ出シ、タ、者カ?』
今度は、明確に。やはり辿々しい口調だったが、理解は出来た。
「そうだ。俺が、お前の主だ――」
だからこそ、何一つの逡巡もなく即答した。それしか生き残る術はないと、本能で理解していた。
『……良イ、ダロウ。ソノ厚顔、サ、気ニ、入ッタゾ。デハ、名ヲ聞コウ、カ……我ガ、伴侶ヨ』
「ああ――」
耳元での囁きに最大級の怖気を感じながらも、契約の意味の為に。
「嚆矢……対馬嚆矢だ」
『宜シイ、契約ハ成ッタ……』
その、『名前』を口にした。
『――――クク、愚カ、ナ。自ラノ、真名ヲ口、ニ、スルナド……対馬嚆矢! 汝ノ真名ヲ知ッタ我、ガ、貴様ニ、人間如キニ従ウ理由ナドハナイ! 己、ノ、浅慮ヲ嘆ケ!』
そこで、哄笑は最高潮に。同じく真名を得たのなら、人外の存在である『星の吸血鬼』に人間である嚆矢に従う理由などはない。
再度、首筋に籠められた力。だが――――
「煩せェよ、三品――――」
『――ガッ!?』
嚆矢は、それを『妖蛆の秘密』でぶん殴った。
『キ、貴様――――何故?!』
「ああン、何でも糞も、そりゃあテメェが――『星の吸血鬼』が俺の真名をもォ、『知る事が出来ない』からさ」
『ナン……ダト……! 貴様、マサカ偽リ、ヲ?!』
「莫〜迦、テメェが先走っただけだ
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