第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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は攻撃に備える。ここまでは想定の範囲内、問題は――――
「ハッ――――!」
後の先を取る。先に嚆矢の腕を掴み、足を払い――――
「――――クッ?!」
その払い足に合わせられ、古都は自らの質量に文字通り『足を掬われた』。片足だけでも十五キロ近い質量と化している肉塊、崩れた『重心』と変わらない『筋力』では止めようもなかった。
更に完全に理合を掴まれ、空中で頭を真下にしたまま――――背中から、畳に叩き付けられた。
「――参りました、主将。流石です」
「莫迦、今の主将はお前だろ?」
勝敗が決した後も、暫く静寂が場を満たす。そして、十秒ほど経ってから、漸く溜め息と拍手が入り乱れた。
「まだまだ、主将を名乗るには精進が足りません。お時間を取らせてしまって申し訳有りませんでした」
「主将を特別視し過ぎだ、この俺の何を見てやがった? 大体、後輩が遠慮すんな。指導くらい、いつでもしてやるって」
慌てて撓んだ襟と緩んだ袴の帯を直した古都を尻目に、嚆矢は気だるそうに汗を拭う。
そして壁掛け時計の時間を確認すると、上座の腕を組み胡座をかいたまま微動だにしない老人――先程から一言も発さずに成り行きを見守っていた白髪に長い顎鬚の顧問『隠岐津 天籟』に一礼した。
「さて、じゃあ、マジで遅れそうだから行くな。古都、理合は他人のだけ掴みゃ良い訳じゃねぇ。自分の理合こそ、常に掴め。そうすりゃあ、勝てずとも敗けやしねぇ」
「押忍、ありがとうございました!」
言うや、片手をヒラヒラしながら修練場を後にする嚆矢。その背中に、合気道部員達は一斉に『押忍!』と返した。
「むひょ、な、なんじゃ?! 飯の時間か?」
「隠岐津先生……丁度今、対馬先輩が帰られたところです」
「なんじゃと、来る時といい帰る時といい、挨拶も無しとは……」
「先生が寝てたから、気が付かなかっただけですよ……」
その声に、居眠りしていた天籟が目を覚ます。古都は、頭痛でも感じたような表情で日盛りの中に消えていく嚆矢の背中を見詰めていた。
「……もっと。もっと強くならないと……」
爪が食い込むほど、拳を握り締めながら。
………………
…………
……
制服に着替えて、校門を潜る。と、其処には二人分の影。
「よう、待ってたんだぜ、コウ」
「ぶふぅ、暑かったんだな……」
「何だよ、ジュゼ、マグラ? 用か?」
待ち受けていた主税と間蔵と合流する。
「久々の合気道はどうだったんだぜ? お前んとこには蘇峰が居るから、次の主将指名が楽で羨ましいんだぜ」
「全くなんだな……剣道部と相撲部は、目を掛けられる程の部員は居ないんだな」
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