暗雲は天を翳らせ
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くれる。
その足音は私の愛しい部下の奏でる音であり、緊張感を少しだけ解してくれた。
――あなたが来たと言う事は急なモノの中でも重要な案件。いつものように扉の前で声を掛けずに、私の名を呼びながら近づいて来れば最重要ね。
「か、華琳様〜!」
焦りを前面に押し出した声が発せられて、胸に来るのは歓喜の感情。
どれほど待っただろうか……性に合わないと分かっていながらも機を作りだすよりも機を待つ事を選んでいたのだから。
本来ならば、自分から動いて全てを操っているはずであるのに、この私が待たされていたのだ。
初手を取られてから巻き返していたとしても、やはり私に受けは似合わない。
切り取られた盤上ならば攻め続ける事は出来よう。しかし最善の手段を見つけてしまったのだから抑え付けるしか無く、策という刃で首を狙った礼儀としてこちらも策で切り返す……というのも私の在り方の一つだろう。
「入って構わないわよ桂花」
扉の前に彼女の気配がすると同時に言い放つと、愛しい私の王佐がおずおずと申し訳なさそうに入室してくる。
起こった事態はなんであるのか、あらゆる感情が綯い交ぜになった彼女の表情からは分からなかった。
田豊の手がこちらに伸びてきたのか、劉備が早々に使者を送ってきたのか、そのどちらもであるのか。
話すようにと目を細めて促すと、桂花は胸に手を当てて息を整えるとゆっくりと口を開いた。
「りゅ、劉備軍から使者が参りました。今は城の前で待たせております」
「そう、半端な使者なら追い返しなさい……というのはあなたも分かっているでしょう。あなたが直接ここに来たなら、相応の使者を寄越したという事なのでしょう」
ゴクリと喉を鳴らした桂花。私の対応がそれほど異常であったのか。ふいと、頭に一つ予測が華を咲かせる。
――ああ、桂花は劉備が戦ってからここに使者を送ると考えていたのでしょう。劉備の性格把握がまだまだね。軍師としての利を考える頭では無く、なりふり構わずに人を少しでも救いたいという思考を積み上げればあれの考えている事を読むのは容易い。
「風評など劉備には無意味よ。それを考えるまでも無く行動して結果で示し、後に民を味方に付けるのがあれの本質。諸葛亮ならそれを分かった上でこの時機に手を打ってくる。次は読み切りなさい」
袁家と劉備軍、二つの事に頭を向けるのは負担が大きいでしょうけれど、桂花にはもっともっと大きくなって欲しい。
内政に関しては桂花は私と肩を並べるとしても、軍略という面ではどうしても及ばない。内政も軍略も、視点を変えれば……というより人が介するのならば全て繋がるのだから化けさせる事が出来るのだ。
「肝に……命じておきます」
しゅんと肩を落とす彼女は可愛らしい。責めているわ
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