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英雄王の再来
第4騎 トルティヤ平原迎撃戦(その1)
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セル・トルディ第一等将軍は、気分が悪いと言わんばかりにぼやいた。それと同時に、鋭く、何かを割くような音・・・鞭を叩く音が響く。その様子に、周りの人間は、身を固くする。

「さすがは、アトゥスちゃん、て感じかしら?」
女のように甲高い声で、隣にいた従卒に問うた。

「そ、そうかもしれません。」
そう言ったと同時に、鞭の音が鳴り響いた。従卒は、赤く腫れた頬を手で押さえている。

「そんなわけないでしょ!この、役立たずが!・・・もっと、真剣にやらないと、殺すわよ。」
その言葉に、ただ、震えるしかない。それは、従卒だけではなく、近くにいた参謀もその一人だ。ヘルセント・デューナー参謀長は、恐る恐る、彼に、もとい彼女に声を掛けた。彼は、声を掛けた事を後悔する事となる。

「と、トルディ将軍、あまりそう言っては・・・。また、従卒が逃げ出します・・。」
彼の従卒は、将軍位になってから15人目である。洩れなく、これまで全ての従卒が逃げ出そうとした。そして、捕まった彼らの、その行く末は誰も知らない。

「デューナー、あなたは誰の“モノ”かしら?」
身の毛もよだつ、不気味な声だ。そして、その眼は、ねっとりと纏わり付いてくる。その声と眼に、デューナーは視線を合わせる事すら出来ない。何も答えられずにいると、頬に強い衝撃を受けた。鞭の音と共に。

「私の質問には、きちんと答えなさい。」
その声には、少しの同情もない。

「は、はい。申し訳ございません。」
デューナーは、血が滲む頬を、手で押させえながら答えた。惨めさが、悔しさが、その心にどす黒く広がっていく。

「もう、いいわ。それよりも部隊に、早く、私の前にヒュセル王子の首を持って来るよう伝えなさい。」
興味を失くしたように、そう言った。もはや、彼を見る事もなく。デューナーは、それにすぐに答えれずにいると、再び、恐怖が彼を襲った。

「早く!」
甲高い声が、耳に刺さる。それは、本物の刃物のように、彼の心に突き刺さる。その場から逃げるために、命令もしっかりと覚えていないまま、彼は駆け出した。味方の陣の方へと、ただただ、走った。

 ヘルセント・デューナーが、“化け物”から、逃げようとしているその時、戦況は大きく変わろうとしていた。アカイア王国軍は、その策略によって一方的な勝利を掴もうとしている。少数の軍で、無謀にも多数の軍勢に挑む“あほ”を演じ、アトゥス王国軍を欺き、油断させた。さらには、霧に乗じて多方面から攻撃する事で、アトゥス軍に敵が無能である事をより意識させ、その一方で、連続での多方面攻撃によって、相手に考える時間を与えなかった。それに見事にかかったアトゥス軍は、多数である敵を少数と勘違いし、猛然と立ち向かい、反撃した。しかし、攻撃してくる敵の、その数が減る事はない。その敵
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