第4騎 トルティヤ平原迎撃戦(その1)
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た。霧を割いて飛んできた一本の矢が、彼の喉笛に突き刺さったのだ。彼は、地響きを立てて、地に臥した。指揮官を失い、統率が出来なくなったトルクメル兵団長の部隊は、組織的な抵抗も出来ず、敵軍の大軍も相まって、総崩れとなった。
「中央に敵、来襲!」
そう、ヒュセル王子に伝わったのは、それから少し経ってからであった。あまりの敵の数に、皆、呆然としていたのだ。連絡兵は、汗をびっしょりとかき、その息を荒々しくしている。
「ちゅ、中央とは、どういうことだ!」
ヒュセルは、連絡兵の理解できない言葉に、怒号で答えた。連絡兵は、それに怯えながらも息を整えて状況を伝える。
「中央より敵が来襲しました。て、敵の数、約5万!勢いも強く、抑える事敵わず。」
「5万・・・?」
理解が追い付かず、ただ、その言葉を繰り返す。そこに、息絶え絶えの、別の連絡兵が駆け込んでくる。
「中央トルクメル兵団長、左翼ザンブル兵団長、フェルイクト兵団長、お討ち死に!」
焦ったような声で、そう伝えた。
「ば、馬鹿な・・・・」
手に持つ、その葡萄酒の入ったグラスを落とす。鋭く、耳に刺さるようなガラスの割れる音が場に響く。ヒュセルのその眼は、どこも見てはいなかった。
「真か!?ちゃんと確認したことであろうな!」
ヒューラー軍団長が、そう怒鳴りつける。連絡兵は、真だと叫んだ。そう言い合っている間にも、目の前から敵の威勢を挙げる声が近づいてくる。敵は、中央を突破し、本陣へと近づきつつあるのだ。ヒューラーは、ヒュセルに近づいて、呆然として動かぬ、将来の主と決めた人物の頬を叩いた。
「な、なにを!?」
ヒュセルが、頬を弾かれたことに驚き、声を上げる。ヒューラーは、ヒュセルの両肩を掴み、大声で叫んだ。
「ヒュセル様、お逃げください!このままでは、ヒュセル様の御命も危う御座います。本陣の後ろには、エル様の騎兵がおります。その騎兵と共にお逃げください。あなたは、ここで死んではならぬのです!」
その大きな声に、その気迫に、ヒュセルは何も言えず、ただただ、頷いた。それを確認したヒューラーは、ヒュセルの乗る馬の尻を思い切り叩く。馬は、大きく啼いて、全速力で走り出した。本陣の後ろ、エルの陣へと向けて。見届けたヒューラーは、腰から大きな剣を引き抜く。彼は、煌めく白刃の長剣を携えて、もうそこまで来ていた敵に猛然と、突撃した。主と定めた御人を、逃がすために。
同時刻
トルティヤ平原 アカイア王国軍陣営
アカイア王国軍は、未だに王子討死の報が入らぬ事に、妙に苛立っていた。敵は、もはや総崩れ、組織としての行動は出来ていない。しかし、まだ、完全な勝利とまでは行っていないのだ。
「攻めあぐねているのですかね。5万の兵が、数千の兵に。」
バショー
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