第4騎 トルティヤ平原迎撃戦(その1)
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
”を持たせていた。
「落ち着け!部隊を左翼へと向けよ!敵は、我らより少ない!落ち着いて対処すればよい。」
ヒュセルも、下手に場数は踏んでいない。これ如きで動揺などしなかった。味方に、檄を飛ばして命令する。ラッパが鳴り響き、軍が動き出す。中央にいた部隊が、左翼の援護へと向かう。味方は、多数という”強気”を存分に抱え、左翼に食って掛かる敵軍に猛然と突き掛かった。敵は、その勢いににわかに後退の色を示すが、それでもまだ、すぐに崩れるという気配は見せない。それに肉薄した、左翼のザンブル、フェルイクト両兵団長は、攻勢を強めた。敵を猛然と突破し、打ち崩す、そう思った時である。今度は、右翼の方からどよめきが上がった。そのどよめきが左翼にも伝わり、攻勢に出ていた部隊も足が止まる。
「右翼より敵来襲!」
連絡兵がヒュセルの下へ、滑り込んできた。この連絡兵は、動揺し、焦っている。
「敵は、少ない兵を分散させたのだ。ばかめ、兵法の初歩も知らんと見える。数は少ない、猛然と敵を叩け!」
そう、連絡兵を怒鳴りつけた。この命令に、右翼の部隊を率いるセント、マンダセン両兵団長は、その指示通りに敵を猛然と立ち迎えた。この時、彼らは、敵の攻撃は、散漫とした攻撃で、ヒュセルが言った事は正しかったと、彼らは自慢げに心に思っていたに違いない。しかし、それは、彼らにとって考えもしない事で、打ち崩される事となるのだが。
その頃、ヒュセルは、この戦闘は、もはや“勝利”しかあり得ぬと確信していた。敵は愚直にも、アトゥス軍を混乱させる為に、少数の兵を分けたのだ。しかし、それを受ける側のアトゥス軍は、落ち着いて処理さえすれば、数で勝るアトゥス軍に負ける要素はない。
彼は、彼の従卒に、葡萄酒を用意させた。ヒュセルには、戦場で”勝利“を確信したその時から、葡萄酒を飲みながら指揮する“傲慢とも取れる”癖があった。その葡萄酒が入ったグラスを持ちつつ、勝利の美酒に酔い痴れていた。しかし、その愉悦に浸っている幸福の時間を、思いも知れない言葉に遮られた。
「ヒュセル様、両翼ともに良く攻撃しておりますが、この辺りで一度、軍を引かれてはいかがですか?」
そのように、少しばかり遠慮ぎみに、ヒューラー軍団長が問うたのだ。
「馬鹿なことを言うな!我らは勝っているのだ、引く理由などありはしない。」
ヒュセルは、赤面になりながら反抗する。彼にとって、この勝利を掴もうとしている時の葡萄酒を取り上げるような事は、誰にも許せることではないのだ。しかし、それを重々承知のヒューラーも、食って下がる。
「ヒュセル様、お聞きください。敵の動きが怪しゅうございます。」
「何が、怪しいと言うのだ!」
「・・敵の我が軍両翼への攻撃は、特段、変ではありませぬ。しかし、攻撃したままというのがおかしいので
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ