第4騎 トルティヤ平原迎撃戦(その1)
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ュンテル・マンダセン兵団長。まだ、30代にも関わらず、白髪が目立つ人物だ。彼もまた、ヒュセル派の一人。
「それは、そうだ。アトゥス軍の出陣は小規模だ、と敵軍へ情報を流したのは、ヒュセル様よ。」
そう、答えるのが、ウォルドン・ザンブル兵団長。
「さすがですな、ヒュセル様。敵国に”魔術師”と恐れられていた英雄王も顔負けの策略で御座いますよ。」
褒めちぎっているのが、クォーラー・セント兵団長。
この場は、決して軍議などではない。ただ、ヒュセル王子のご機嫌取りの場である。当の本人であるヒュセル・シュトラディールは終始、笑顔だ。その雰囲気に気分が悪くなった私は、この空気を壊す事にした。
「敵は、斥候でこちらの陣容が分かった筈です。それにも関わらず、進軍を止めようとしないのは、訝しく思いませんか?」
わやわや、と騒いでいた皆が、波を打ったように静かになった。皆の眼が私に集中している。先ほどまで、終始笑顔だったヒュセル兄様も、その顔が赤くなりつつあった。
「お言葉ですが、エル様。この深い霧で御座います。敵は、我々の陣容を全て把握する事は叶わなかったのですよ。」
ザンブル兵団長が、ヒュセル兄様の機嫌が悪くなるのを感じてか、すぐさまに答えた。その答えに、皆一様に頷いている。
「ザンブル兵団長・・こちらが出来た事を何故、敵が出来ないと言えるのか?」
私は、嘆息混じりにそう答えた。
「エル様、ミルディス州軍の索敵能力は知れておりますよ。」
次は、セント兵団長が、そう吐いた。
「その根拠は?」
もはや、聞くのも億劫なほどに、理屈が通らない。これで、一軍を預かっているというのだから、アトゥスが負け続けているのも、理解ができる。そして、セント兵団長の根拠を聞いた時、私は、今世紀最大に呆れたに違いない。
「それは知れた事。アカイア王国は、蛮族に違いありません。文化、芸術も分からぬ”あほ”ばかりですよ。」
「・・・そ、それが理由か?」
私もさすがに、狼狽した。まさか、そのような稚拙な答えが返ってくるとは思っていなかったからだ。それを、自分の素晴らしい説明で、私が答えに困っていると勘違いしたのか、さらに捲し立てて来た。
「ご存知ではないのですか?我々、アトゥスの芸術品が、アカイアで安く売られているのですよ。そんな奴らに、まともな偵察が出来るとは思いませんな。」
手を額に当てて、考え込むような仕草を見せた。私が、考え込みたいよ。
結局、この軍議は、何も実のある話もなく、このまま終わった。ただ、盛り立てる王子を褒める、そう言う場に成り代わって。その場で、雰囲気を壊すような事を言った私は、洩れなく、ヒュセル王子より小言を承った。
「今後、口を挟むことを許さない。・・・わかったか?」
「はい。申し訳ありま
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