As 14 「闇の書の意思」
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防御魔法を展開する。
俺に彼女の防御を撃ち抜くことができるか……いや、弱気になるな。今はできることを全力でするだけだ。
「撃ち抜くッ!」
身体を捻りながら右手に握り締めた剣を撃ち出すと、魔法で加速を掛けたこともあってか撃ち出した瞬間に爆音が響いた。紅蓮の炎を纏った一撃は、闇色の防御魔法に激突し大量の衝撃音と火花を発生させる。
今までで最高の威力で撃ち出したと自負できるブレイズストライクだったが、撃ち抜くどころか完全に静止させられてしまった。高町達の砲撃を防いだ防御力は伊達ではない。
「お前は……主と共に眠るといい」
――不味い!
そう思った次の瞬間、俺は後方へと下がり始めていた。最初は何が起きたのか理解できなかったが、こちらに微笑みを向けているテスタロッサを見た瞬間に全てを悟った。
テスタロッサの身体は、闇の書に飲み込まれるように光の粒子なって消えていく。一瞬で感情が溢れたために、咄嗟に言葉が出てこない。
「……フェイト!」
唯一言葉にできたのはそれだった。消え行く少女が驚いた顔をしたが、すぐにまた微笑んで口を動かした。言葉を聞き取ることはできなかったが、俺には「大丈夫」と言っているように聞こえた。
闇の書が閉じるのと同時に、静寂の時間が流れ始める。
俺の胸の内はテスタロッサへの気持ちで溢れてしまい、それによって噛み切ってしまったのか口の中に血の味を感じた。
「対象が変わってしまったが、彼女にも心の闇があった。問題はない……」
「…………」
「主もあの子も覚めることのない眠りの内に……終わりなき夢を見る。生と死の狭間の夢……それは永遠だ。お前も夢の中で過ごすといい。そうすれば幸せなまま、知らない内に全てが終わる」
「…………言ったはずだ。俺ははやて達を助ける」
楽になってしまいたい。そういう思いはある。
だけど、ここでそれを選ぶのは許されない。主の正体を知りながらも隠し続け、高町達を危険に晒してきたことへの自責の念や、はやて達を助けたいという想いがそうさせている。
だが最大の理由は、これまでのことを責めるどころか背中を押してくれた……俺なんかを身を挺して庇ってくれたテスタロッサに申し訳が立たないからだ。俺は彼女を助けたい……いや、助け出す。
「お前の提案どおりにすれば、今感じている苦しみや恐怖から解放されて幸せだけを感じることができるのかもしれない。だけどそれは……逃げだ。永遠なんてない……たとえどんなに辛くても、苦しくても。俺は……現実を生きていたい」
震えそうになる身体をどうにか抑え込み、剣を構え直した。
ネガティブなことを考えすぎたせいか、吐き気にも似た感覚に襲われている。それを紛らわせるように、意識を管制人格の動きへと集中する。
管制人
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