暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第十七話 さぁ、いきましょう
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ー!いいぞいいぞレンタロー!」」」

三龍応援席では、一人だけ席に座っている翼の音頭でベンチ外部員が喝采を上げる。
夏の大会初戦。三龍はシードなので二回戦からの登場である。

「…142か」
「確かに速いなぁ」

二回戦からでも、バックネット裏にはスピードガンを構えてメモをとっているスカウトと思わしき大人や、ビデオカメラを回しながらスコアをつけている他校の野球部員が居る。

確かに鷹合はただのフィジカルお化け、筋肉で野球しているような選手だ。しかし、ここまでフィジカルだけでできてしまうのなら、それはそれで脅威であり可能性なのだ。

(…さすがに普通の公立レベルなら、鷹合のこのスピードには中々対応できねぇよな)

ミットの中の左手にビリビリとした衝撃を感じながら、宮園は内心つぶやく。
そして構えた所はほぼ真ん中。

ガキッ!
「オッケー!」

どん詰まりの打球がセカンド渡辺の元に転がる。キッチリとボールが一塁に転送され、スリーアウト、チェンジとなる。

(…捕手はただ受けるだけ、リードも何もあったもんじゃねぇな)

宮園は一塁のバックアップもそこそこにして、自軍ベンチへそそくさと引き揚げていく。

「…つまらねぇ」

宮園の小さな呟きを聞く者は居なかった。



ーーーーーーーーーーーーー



「よっしゃーこの回いくぞー」
「先制するでー」

攻撃に移る三龍の応援席。
頭に色とりどりのハチマキを巻いた、ユニフォーム姿の野球部が意気を上げる。

「…好村、あのな」
「分かってる。牧野さんだろ?」

足に大きなギプスをつけている為、立ち上がる事もできない翼に、太田が耳打ちしてきた。
翼は言いたい事を察して、スタンドに居る野球部員の中で一人明らかに暗い顔をしている、3年生の牧野を見た。
3年生16人のうち、ベンチを外れたのは5人。3人はボールボーイで、1人はスコアラー。
そうして牧野だけが1人スタンドで応援する羽目になったのだった。

3年生が1人だけというのは、やはり下級生は気を遣うものだ。何を言っても生意気にしかとられないだろう。腫れ物扱いで放っておくのが普通だ。
しかし…

「ちょっと俺、行ってくるよ」
「は?お前、正気か?」
「あんな暗い顔されてたんじゃ、たまらないだろ?元気出してもらってくる」

「応援団長」翼はそんな牧野に声をかけるべく、松葉杖を突いて、エッチラオッチラ、出向いて行った。

「牧野さん」
「……何や」

案の定、牧野は撥ね付けるような態度である。
放っておいて欲しいらしい。
が、翼は退く気なんか無かった。

「この中で3年生は牧野さんだけです。僕ら下級生を引っ張ってください。お願いします。」
「あぁ!?何
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