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白波
第一章
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第一章

                         白波
 紫の着流しの派手な五人の男達が京の夜の中にいた。
 一人は大きな髷を結っており碇と波の模様が着流しにある。
 一人は前髪立ちであり着物には白蛇と琵琶と菊がある。
 一人は総髪の髷で雲龍を着物に飾っている。
 一人は前髪立ちのまだ少年で着物にあるのは鳳凰だ。
 一人は前を剃った髷で首には手拭、着物は雷獣だ。
 最初から日本駄右衛門、弁天小僧菊ノ助、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸という。
 音に聞こえた盗人達であり鎌倉で暴れ回り京に逃げてきたのだ。その京の都においてだ。五人は闇の中でそれぞれこう言うのだった。
「都に来たには来た」
「ああ、けれど頭」
 駄右衛門にだ。弁天が話す。
「もう追っ手が来ているぜ」
「流石は青砥殿、見事よ」
 彼等五人の宿敵であるだ。その奉行が手を回したのだ。
 その青砥についてだ。駄右衛門は感嘆して言った。
「我等が来る前に早馬を出しておられたわ」
「かなり早く来たんだがな」 
 忠信が歯噛みしながら言う。
「それでもか」
「都のあちこちに幕府の手の者がいるからな」
 赤星も話す。
「その中でどう仕事をするか」
「折角都には金持ちが多いってのにな」
 南郷は獲物のことを思い悔しがる。
「それで何もできないってのはな」
「悔しい話だな」
「全くだ」
 忠信と赤星も南郷の言葉に賛同する。弁天も含めて四人はこの状況に歯噛みしていた。しかしだった。
 駄右衛門はその四人にだ。こう言ったのである。
「安心しろ。既に獲物は決めた」
「おお、流石は頭」
「それを決めていたのか」
「もうか」
「じゃあその場所は」
「寺じゃ。一つ大きい寺がある」
 京は寺の街だ。寺は数多い。そしてその中の一つをだ。獲物に定めたというのだ。
「そこに忍び込みそのうえでじゃ」
「そして手に入れるか」
「そうするか」
「うむ。そうするぞ」
 こう四人に言ってだ。早速だ。
 駄右衛門は四人を連れてそのうえでその寺に忍び込み大判小判をこれでもかと手に入れた。その山の様な大判小判に隠れ家で囲まれた中でだ。
 弁天は大喜びで盃を手にして言うのだった。
「やったな。誰にも気付かれなかったな」
「ああ、美味くいった」
「誰も傷つけはしなかった」
 忠信と赤星も飲みながら満面の笑みで話す。
「わし等にとっては満足いったな」
「金も手に入ったしな」
「頭、とりあえず仕事は一つ済んだな」
 南郷は酒と一緒につまみの煎り豆をかじりながら駄右衛門に話す。
「で、次の仕事だよな」
「ああ。それももう決めている」
 既にだとだ。駄右衛門も飲みながら話す。
「明日またやるぞ」
「じゃあとりあえずはこの宝を隠してだな」

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