第九十八話 道場にてその五
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「じゃあ中に入ってな」
「今からですね」
「ああ、今からな」
「闘おうな、俺にとって最後の闘いをな」
「はい、それでは」
「全力で闘おうな」
ここでこうも言った中田だった。
「お互いに」
「はい、全ての力を出して」
「最後の最後にそうしたいと思っていたんだよ」
「僕とですか」
「最初に会った時は別に思わなかったさ」
中田は道場の前で話していく。
「何ともな」
「そうだったんですね」
「けれど今はな」
「違うんですね」
「君は本物だよ」
本物の剣道家だというのだ、剣士ではなく。
「是非手合わせしたくてな」
「今こうしてですね」
「闘おうか」
「はい、道場の中で」
「入ろうな」
この話をしてだ、そのうえでだった。
二人は道場に入った、樹里や聡美達もだ。そして。
二人は道場に対して一礼した、そのまま道場の稽古の場に入ってだった。
今度はお互いに一礼してだ、すぐに剣を出した。
前に出て蹲踞もした、そこまで見て樹里は聡美に言った。
「剣道ですね」
「はい、明らかに」
竹刀は持っていない、だがだった。
「今の上城君と中田さんは」
「剣道家として闘うのですね」
「そうです」
それに他ならなかった、今の二人は。
「剣道です」
「剣道は独特の考えがあるわ」
ここでこう言ったのは智子だ、豊香もいる。
「東西問わずね」
「そうですね、剣は誇りですね」
「そうよ、まさにね」
それ故にとだ、智子は自分の隣にいる豊香に答えた。
「だからね」
「この闘いは剣道家の闘いなのですね」
「剣士の闘いではあっても」
それ以上にというのだ。
「剣道、日本のそれにおいてね」
「闘うものですね」
「そうなるわ」
見れば実際にだった、上城と中田は今は剣道の構えだった。上城は中段、中田は左手の剣を頭の上にやり右手の剣は中段にしている。その二刀流の構えで上城に対しているのだ。そうしてまず先に動いたのは。
中田だった、瞬時に。
右手の剣を前に出してだ、炎の矢を飛ばした。
上城はその矢を自身の剣に氷を出して受けた、激しい蒸気が起こり炎は消えた。
それからだった、中田は。
左手の剣も使い両手から突きの要領で矢を繰り出す、上城は全て剣に宿らせている剣で防いだ。それを見てだった。
中田は笑みを浮かべてだ、上城に言った。
「今のを防げた奴はいないんだがな」
「二刀流の突きをですか」
「ああ、稽古でも試合でもな」
そして剣士の戦いでもだ。
「今のはな」
「僕がはじめてですか」
「そうだよ」
こう言うのだった。
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