第九十八話 道場にてその四
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「そっちもだよ」
「楽しみなんですね」
「まあ彼女もいないけれどな」
このことも笑顔で言うのだった、今は。
「作ってからだけれどな」
「それでもですか」
「ああ、これからはな」
「ご家族で、ですね」
「楽しくやっていくよ」
笑顔で話すのだった、中田は明るい笑顔で未来を見ていた。そのうえで上城に言うのだった。
「じゃあ夕方な」
「その時にですね」
「ああ、手合わせしような」
その時にだというのだ。
「それで終わりだよ」
「命のやり取りですね」
「そうだよ、けれどな」
確かに命のやり取りはする、しかしだというのだ。
「俺達はこれまで通りな」
「今もですね」
「仏にやっていこうな」
こう言うのだった、そしてだった。
彼はそのまま自分が行く場所に向かった。そのうえで。
上城もだ、樹里に言った。
「中田さんは中田さんだね」
「そうよね、不思議な人よね」
「夕方には命を賭けて闘うのに」
あと数時間でだ、しかもだ。
上城こそがその相手だ、それで樹里に言うのだった。
「普通はないね」
「そうよね、普段と変わらない感じだから」
「殺気がなくて」
「ご家族のことを考えておられて」
「幸せなんだね、今」
中田の現状のことも言うのだった。
「あの人は」
「そうね、そのこともね」
「わかるよね」
「うん、あの人は幸せだよ」
そしてその幸せをだというのだ。
「その幸せをずっと味わっていきたいって思ってるんだ」
「そして剣士としての最後の闘いを」
「夕方に僕と行うんだね」
「そうね、中田さんは生きるつもりね」
「うん、そのつもりだよ」
それはわかるというのだ。
「あの人は」
「そうよね、何があっても」
「そして僕もね」
上城、彼もだった。
「生きるつもりだから」
「ここで倒れないのね」
「そう、そのつもりだから」
だからだというのだ。
「何があっても負けないよ」
「そして中田さんの幸せも」
「うん、そのこともね」
忘れていなかった、今も。
「壊してはならないね」
「もう中田さんのことだけじゃないよ」
「ご家族のことよね」
「そう、だからね」
それでだというのだ。
「あの人は絶対に」
「倒さない、ね」
「そうするよ」
こう言うのだった、そのうえで今は樹里と共にだった。
二人でいた、そして午後も過ごしてだった。
夕方に道場に行った、樹里はこの時もついてきた。するともうだった。
中田は道場の前にいた、彼と共に聡美達もいる。上城は彼等も見てそれで確かな顔で述べた。世界は昼から夕方のそれになろうとしていた。
その青から赤が近付く中でだ、中田は上城に今もまた至って明るい顔で上城に声をかけた。その声はというと。
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