災厄の道化
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
カトレーンの家。
その、文字通りの“豪邸”の一室に、女性と少女がいた。
もっと詳しく言うならば、厳しい顔の初老の女性と、冷たい雰囲気の絶世の美少女がいる。
「・・・言ったわよね?明日、使いを出すと」
「ええ、確かにお祖母様はそう仰りましたわ。だけど私ももう子供じゃありませんもの、1人でここに帰る事くらい出来ますわ」
厳しい表情のシャロンに対し、ティアはいつもの調子を取り戻したように小さい皮肉のカケラを混ぜた言葉を放つ。
「それで・・・使いを無視してまで早く帰って来るなんて、どういうつもり?」
「嫌だわ。それじゃあまるで私が何か企んでいるみたいじゃないですか」
クスクスと笑い声を零しながら、ティアが小さく首を傾げる。
勿論、これは全て演技だ。
本来なら冷たい表情で答えているだろうが、今回いつもの手は似合わないとティア自身、気づいている。
だからわざと笑みを浮かべ、完璧なる淑女の仮面を纏って戦う。
「お祖母様・・・あなたこそ、一体何を企んでいるのかしら?」
「何、ですって?」
口調が、崩れた。
その冷たく、ネコを思わせるつり気味の青い瞳に物騒で鋭利で冷たい、殺気立った光が宿る。
スッ・・・と整った顔から笑みが消え、氷の女王が君臨した。
「そんなの、貴女には解るんじゃないの?無駄に頭が良くて、情報処理能力に長けた貴女なら」
「さあ?解らないから訊ねているのよ」
あくまでも、口調に柔かさは残す。
いつもの刃のような鋭い口調では気を荒げさせるだけだ。
(・・・この女は自分より出来の悪い人間を見下すのがお好きのようだからね、無能な女を演じ続けてあげるわ)
何も解っていない人間ほどバカにして見下す。
それが自分の祖母、シャロン=T=カトレーン。
それを知っているから、わざと下手に出る。
この演技が通じている可能性は低いが、手があるのなら全ての手を余すところなく使い切る。
「そう、なら・・・」
シャロンが目を伏せた。
「!」
嫌な予感がした。
ティアは思わず震え、ソファから立ち上がる。
一瞬冷静さを欠いた事に自分で気づき、改めて周りの情報を得ようとした瞬間―――――
「何も知らないまま、自分の役目を果たしなさい」
何者かがティアの体に手を突っ込んだ。
水である自分の体に違和感を感じたティアが違和感の正体を確かめようと、目線を下げたと同時に――――。
「っがは・・・っ!」
爆発音が至近距離で響き、ティアの意識が途絶えた。
「注意力散漫、ね・・・私が無防備に貴女と会う訳ないでしょう」
ぐったりとし、気を失ったティアを睨みつけ、シャロン
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ