第八章
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第八章
「何処に行きたいかな」
「ええと、そう言われましても」
「まだ決められないかな」
「そうですね。それだと」
考えながらだ。妙子はおじさんにこう答えたのだった。
「アーケード街行きたいです」
「アーケードって?」
「八条町のアーケードって凄く長くてお店が一杯あるんですよね」
「ああ、あそこは凄いね」
おじさんもだ。そのアーケード街のことは知っていた。おじさんと妙子が今住んでいるその町からだ。すぐの場所にあるのである。
「あそこに行きたいんだ」
「駄目ですか、そこで」
「ううん、それならそこに行こうか」
おじさんはまたにこりと笑って述べた。
「それじゃあね」
「はい、それじゃあ」
こうしてだった。おじさんは妙子をそのアーケード街に連れて行った。広い道の左右にだ。本屋やゲームセンター、それにブティックや様々な食べ物の店、吉野家やマクドナルド等のチェーン店もある。そこに人が行き交いだ。とても賑やかな場所であった。
そこに入るとだ。妙子は笑顔でだ。隣にいるおじさんにこう話すのだった。
「それじゃあまずはですね」
「どのお店に行きたいのかな」
おじさんは今は普段のジャージ姿ではなくだ。青いスラックスに白いシャツという格好だ。妙子はジーンズにパーカーである。やはりその手にはあのぬいぐるみがある。そうした格好でここにいるのだ。
おじさんはだ。その妙子にこう言った。
「妙子ちゃんの好きなお店でいいからね」
「それじゃあまずは」
「まずは?」
「本屋、御願いします」
最初に行きたいのはそこだというのだった。
「そこで漫画とか本とか買って」
「それでだね」
「はい、それからは」
妙子はコロちゃんを手に笑顔で話す。そうしてだった。
本屋の後はうどん屋、そしてアイスクリーム。その他にはお好み焼きにたこ焼きも食べた。ゲームセンターにも入りおもちゃ屋でゲームソフトも買った。とにかく色々なものを買ってそうして遊んだのだった。
ひとしきり遊び買い終えるとだ。もうその頃には。
夕方になっていた。アーケードの外に出ると足元は。
水たまりがあった。夕立が降った後だった。
「雨、降ったんですね」
「そうだね。けれどもうね」
おじさんは空を見上げた。もう晴れようとしている。
「止んだね」
「そうですね。よかったですね」
「全くだよ。それにしても」
「それにしても?」
「今日はよく遊んだね」
おじさんはにこりと笑って妙子に述べた。
「それによく食べたね」
「はい、とても」
「妙子ちゃんってアーケード街好きだったんだ」
「子供の頃お父さんとお母さんによく連れて行ってもらったから」
それでだというのだ。ここでも死に別れた親だった。
「それでなんです」
「そうなん
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