第百五十八話 義昭の愚痴その九
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「彼等だけで向かう、それではな」
「織田は倒せませぬか」
「あの者達でも」
「うむ、無理じゃ」
彼等を以てしてもだというのだ。
「力が違い過ぎる」
「だからですか」
「今は無理ですか」
「そうじゃ」
だからだというのである。
「一家一家ではな」
「如何に武田や上杉でも」
「あの強豪達でもですか」
「織田を倒せませぬか」
「それは無理ですか」
「織田家の兵は確かに弱い」
それこそ天下の強兵としていられている武田や上杉達とはだ
信長の兵は格段に弱いのだ。
「まさに天下最弱じゃ」
「しかしそれでもですか」
「その強兵の武田や上杉でもせですか」
「戦おうとも」
「それでも」
「確かに兵は弱いがじゃ」
それでというのだ。
「武具は格段によく鉄砲も多い」
「鉄砲、ですか」
「それが大きいですか」
「尚且つ数が多い」
このこともあった。
「数はどちらも圧倒しておるわ」
「だからですか」
「織田家には武田も上杉だけでは勝てませぬか」
「彼等だけでは」
「それは」
「うむ、無理じゃ」
絶対にという口調だった。
「織田家の武具の質と鉄砲の前にはな」
「決してですか」
「勝てませぬか」
「若し織田家に勝とうなどと思うと」
そうする為にはというのだ。
「互いに手を結ぶのみじゃ」
「武田と上杉が」
「あの両家が」
「あの両家だけではない」
武田、上杉だけでなくというのだ。
「北条、毛利もじゃ」
「共に手を結び、ですか」
「そのうえで」
「向かわねばな」
到底だというのだ。
「勝てぬであろう」
「では今はですか」
「どちらも」
「織田家には勝てぬ」
武田、上杉の側に立っての言葉だった。
「だからわしもじゃ」
「その時はですか」
「まだ、ですか」
「織田家におるままじゃ」
そのうえで動くというのだ。
「何もせぬ」
「しかし殿」
ここで家臣の一人が松永の傍に来て彼に問うた。
「この度は」
「織田家にとって最大の窮地じゃな」
「まさにその領内の至るところでの戦です」
一向宗は織田家の領内に多い、元々近畿や東海、北陸に多いが織田家はそういった場所を領地にしているからだ。
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