第五話 二人目の持ち主その十一
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「ねえ、このこと先輩にもお話しよう」
「天極先輩だな」
「あの人にお話しよう」
「そうだよな、あの人にお話しないとな」
駄目だとだ、薊も裕香の言葉に応えた。
「それじゃあな」
「ええ、お昼にでもね」
「先輩に今から連絡するか?」
「そうする?」
二人共だった、ここで。
それぞれの携帯を出した。薊は左手で背中越しに持っていた鞄から、裕香は右肩にかけていた鞄からそれを出してだった。
智和に連絡しようとした、しかし。
その二人の前に車が来た、八条自動車の高級車であるサンダーチーフだ、黒く大きなキャデラックを思わせるその車が来た。
その車を見てだ、薊は携帯のメールを打とうとしていた手を止めて裕香に言った。
「へえ、凄い車だね」
「サンダーチーフね」
「この車そういう名前なんだな」
「そうなの、ただね」
「ただ?」
「この車凄く高いのよ」
高級車だとだ、裕香が薊に話す。
「ベンツ並よ」
「おいおい、凄いな」
「だからそうそう持っている人いないけれど」
「じゃあこの車乗ってる人お金持ちか」
「結構なね」
そうだというのだ、だがそのサンダーチーフはというと。
二人の前で停まった、それでだった。
後部座席の左の扉、二人の前の扉が開いてだった。
そこから出て来たのは智和だった、彼は車から出て来てそのうえで車中の人達に言うのだった。
「今日はここでいいです」
「左様ですか」
「はい、今日も有り難うございます」
「いえ、これが仕事ですから」
車の中から穏やかな声で返事が来た。
「お気遣いなく」
「そう言ってくれますか」
「では今から」
「はい、行って来ます」
こうした穏やかなやり取りの後でだった、智和を連れて来た高級車は元来た道を帰って行った。そして智和は二人を前にしてだった。
微笑み一礼してからだ、こう言った。
「おはようございます」
「ああ、おはようさん」
「おはようございます」
二人はその智和にそれぞれの言葉で挨拶を返した。そのうえで薊は左手に持っている鞄を背中越しに持った姿勢のままで彼に尋ねた。
「先輩の家の車だよな」
「はい、朝はよくです」
「そうして送ってもらってるのか」
「そうしてもらっています」
「凄いな、また」
車それも高級車での登校がというのだ。
「実際にこんな人っているんだな」
「漫画や小説のお金持ちみたいだというのですね」
「屋敷自体がそうだけれどさ」
「ははは、家もですか」
「そのまんまだろ、先輩ってさ」
そうしただ、漫画や小説、アニメ等に出て来る資産家の子息だというのだ。
「実際に金持ちだし成績優秀で顔もいいしさ」
「あまり褒められると恥ずかしいですね」
「事実だよ、とにかくな」
「とにかく?」
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