第五話 二人目の持ち主その十
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薊にだ、後ろから声がしてきた。
「ああ、ここにいたよ」
「おおい、天枢無事か?」
「何もなかったか?」
「ああ、何もね」
流石に怪人のことは言えない、だから薊は後ろからの拳法部の面々の声に顔を向けてそのうえで応えた。
「迷っただけでさ」
「そうか、まあ足が速いのはいいけれどな」
「気をつけろよ、うちの学園は滅茶苦茶広いからな」
「先に行き過ぎると慣れてないと迷うからな」
ランニングに出てもだというのだ。
「だからな、ランニングも慣れるまではな」
「幾ら速くても俺達と一緒に走れよ」
「まあ道を覚えたら幾らでも速く走っていいからな」
「そうしろよ」
「そうするよ、いやあ学園の中で迷うなんてさ」
このことは本当のことだ、それで苦笑いで言う薊だった。
「そうそうないよな」
「広いからな、うちは」
「保育園から大学院まであってな」
「博物館とか美術館もあるしな」
「動物園とか植物園もな」
そうした施設も充実しているからだ、八条学園は相当な広さなのだ。その広さは世界の学園でも屈指とされている。
「特にこの辺りはな」
「農業科や大学の農学部の敷地でな」
「牧場とかもあるしな」
「こうした森もあるからな」
「だよな、というか前の学校とは全然違うね」
薊は男子の先輩達に応えつつ笑って言う。しっかりと座ってそのうえで両手を自分の腰の横に置いての言葉だ。
「広さも設備も」
「そうだよ、だからな」
「その辺りは注意しろよ」
「広いっていうことはいいことだけれどな」
「広いと迷うからな」
「今度から気をつけるよ」
このことは本気で思っている、迷ったのは事実だからだ。
「さもないと生きて帰られないみたいだしな」
「いや、生きては帰られるよ」
「それはな」
「パトロールの警備員さん達が車で回ってるしな」
そうした人もいるというのだ、この学園には。
「遭難はしないよ」
「迷ってもな」
「そこは安心しろよ」
「流石にそこまではないからな」
「そうだね、じゃあまただな」
「ああ、ランニング再開だ」
「気合入れて走ろうな」
こう話してだ、そのうえで。
薊は拳法部の面々に見付けてもらってからそのうえで彼等と共に走った、この日の闘いはこれで終わった。
次の日彼はカメレオン怪人との闘いのことを朝の登校の時に裕香に話した、丁度二人で部活の朝練に行く時だ。
裕香はその話を聞いてだ、薊にこう言った。
「よかったね、咄嗟に思いついて」
「ああ、消えた相手にどうするかな」
「確かに影は消せないわね」
「そうなんだよ、闘う中で咄嗟に思いついたんだよ」
「ええ、薊ちゃん頭いいわね」
「それ怪人にも言われたよ」
「私もそう思うわ」
裕香もだった、薊は頭がいいと思った。
そ
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