第五話 二人目の持ち主その八
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「やるねえ」
「当然だ、俺は普通の人間ではない」
「怪人かい?」
「怪人と呼ぶか」
「ああ、普通の奴じゃないからね」
「そう呼んでもいいがな。俺達は自分達の呼ばれ方を知らないからな」
「知らない?」
風を感じた、それでだった。
薊は風をかわした、その風は彼女に対する攻撃のものであり拳そのものだった。
その拳、顔に正面から来たそれをかわしながら前に左足の蹴りを放つ、すると確かな感触が足から身体全体に伝わった。
そしてだ、呻き声に対して言った。声は前から聞こえてきた。
「あんた達自分の名前を知らないのかい」
「俺達はな」
「へえ、じゃあ怪人って呼んでもいいんだね」
言いながらだ、そのうえでだった。
薊は今度は棒を上から振り下ろした。声がしたことで相手の場所は耳でおおよそ察した。それでそこに棒を振り下ろしたのだ。
怪人の頭を砕こうとする、しかしその一撃は。
怪人はかわした、どうしてかわしたかは見えなかった。
薊は攻撃をかわされ棒が空を切った瞬間に反撃を懸念してさっと左に動いた。そのうえで怪人に対して問うた。
「そうなんだね」
「そうだ、だから怪人と呼ぶのならな」
「いいんだね」
「勝手にしろ」
こう薊に言う怪人だった。
「貴様のな」
「じゃあそうさせてもらうね」
「そしてだ、俺達はだ」
今度は怪人の方から言ってきた。今は攻撃を仕掛けてこない。
「貴様達だけに興味がある」
「あたし達だけに?」
「そうだ、貴様達にだけだ」
こう薊に言うのだった。
「他の者には基本的に興味がない」
「つまりあたしの命だけかい」
「そうだ」
まさにその通りだというのだ。
「貴様達を消すことが役目だ」
「へえ、それはどうしてかね」
「さてな、そこまで答えるつもりはない」
それは全くだというのだ。
「生憎だがな」
「そこまでお人好しじゃないってことだね」
「当然だ、俺は貴様の敵だ」
だからだというのだ。
「それでどうして言う」
「それもそうだね。しかし」
「何だ、今度は」
「あんたずっと姿を隠してるんだね」
このことをだ、薊は怪人に言うのだった。見れば怪人はずっと姿を消している。今は攻撃を仕掛けて来ないが。
「そうなんだね」
「隠してこそだからな」
「カメレオンだからね」
「見えないことはそれだけで武器になる」
怪人は言い切った。
「カメレオンの強さはそこにある」
「そういうことだね」
「ではだ」
今度は怪人から言ってきた。
「そろそろ決着をつけるか」
「来るんだね、また」
「死ね」
怪人の声だけがした、そして。
気配が動くのを感じた、やはり姿は見えない。
だがここでだ、薊は。
咄嗟にだ、己の前に。
棒を下から上に思い
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