オーバーロード編
第31話 心定めて
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舞たちがガレージを出て行った。残されたのは碧沙と、光実。
「兄さん」
隣に座る妹が光実の膝に手を置いた。光実は碧沙の手を握り返し、薄い肩に頭を預けた。
「……知ってほしくなんか、なかったのに……どうして…こうなっちゃうんだよ…っ」
どこで歯車が狂ってしまったのだろう。
紘汰と舞がヘルヘイムの森に迷い込んだからか。紘汰がインベス化した裕也を殺したからか。光実が戦極ドライバーを手にしたからか。貴虎たちがこぞって紘汰にヘルヘイムとユグドラシルの秘密を暴露したからか。紘汰が舞に全て打ち明けてしまったからか。光実が――
光実は重大な法則に気づいた科学者のように笑みを浮かべ、片手で髪を掻き上げた。
「僕が紘汰さんをチームに呼び戻さなきゃよかったんだ――」
光実の戦う姿に感銘を受けて、紘汰は再びこちら側に戻ってきたと言った。
まだインベスゲームもランキングもあった頃。光実がただ意地だけで戒斗と戦ったあの姿を見たせいで。
つまり、光実のせいで。
「兄さん?」
「は、はは。何だ、僕のせいじゃないか。全部、僕の。はは、ははは」
笑いが止まらなかった。この状況を何より望まなかった光実自身が、現状を作り上げた張本人だったのだ。笑うしかない。
「兄さん、どうしたの。ねえ」
「碧沙」
光実は碧沙と向き合う態勢になり、淡々と今の心境を語り始めた。
碧沙は段々と悲しげに眉を寄せていきながら、それでも否定句の一つも上げずに聞いてくれた。およそ小学6年生の女子に聞ける内容ではなかったにも関わらず。
「――手伝ってくれるよね、碧沙」
碧沙が口を開こうとした。光実は小さな唇を人差し指で塞いだ。どんな言葉でも、きっと光実の決意を鈍らせる。自分と貴虎にとって、この妹の言葉には魔法じみた効力がある。
「大丈夫。何もしなくていい。ただ黙ってる、それだけでいいんだ」
「……いつまで?」
「いつまでも」
「だれにも?」
「誰にも。特に咲ちゃん。あの子は秘密そのものを嫌ってるから」
「わたしに、咲にカクシゴトしろって、言うのね」
「うん。聞いてくれなきゃ、咲ちゃんに何しちゃうか分からないよ」
「! ……そういう言い方はヒキョウよ」
「ごめん」
光実は碧沙を抱き寄せた。光実の短い両腕でも収まるほど小さな体。脆い体。それと反対の、したたかでしなやかな心を知っている。こんな非道い兄でも、自分は碧沙の兄なのだ。
「ごめん」
もう一度だけ、今度は本当の意味で謝りなが
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