第二章
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」
「無論」
業平はその問いに迷うことなく答えた。
「それが何か」
「いえ、業平様は多くの女性の方に愛されていますので」
狐達は言う。
「それでも奥様を愛しておられるのですね」
「愛する花は一輪だけとは限らない」
業平はにこりと笑ってこう述べた。
「幾つもの花を愛してもいいのではないのか」
「そういうことですか」
「だがあれは」
ふと優しい笑みを浮かべた。
「その中でも大輪の花だ。見事なまでのな」
「ではその大輪の花にお便りを」
「くれぐれも頼むぞ」
「わかりました」
「それでは」
狐達は頷いた。そして煙と共に姿を消した。
「また都に戻られましたら御会いしましょう」
声だけが業平に語り掛けていた。
「その時まで」
「暫しのお別れを」
「うむ、ではまたな」
「はい」
業平は狐達と別れた。そして暫くは川辺にそのまま留まっていたがやがて歩きはじめた。
「もう暫くここに留まり」
彼は呟く。
「大輪の花が咲いている都に戻ることにしよう」
呟きながら川辺を後にする。後には銀色の川とせせらぎだけが静かに残っていた。
業平と狐 完
2006・9・3
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