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覇王と修羅王
合宿編
十二話
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最後に部屋を出るが、頭には回顧録に記された文字がこびり付いていた。
 力の象徴や道標のような表現と、災害や化け物の様に畏れるような表現もあった中で、唯一の人らしい呼び方。

(轟き破壊せし者……か。どんだけ強かったんだよ、アレディ・ナアシュってのは……)

 修練中にも口出ししてくる様になり、身体を縛り適った動きをさせようとする経験。普段は抗えるが、修練を続け疲労が溜まってくると――――持って行かれそうになる。
 その束縛から何と無く強いのだろうと思っていたが、どのくらい強いのか余計に解からなくなった。分厚い壁か、標高の見えない山が現れた気分だ。

「クリスくん、どうにかならんもんかねぇ?」

 如何にか回避出来ないものか、とアレクは駄目元で引っ張るクリスに訊いてみるが首を振られ、眉間に皺を作る。
 因みに、クリスは見学取り止めだと思い首を振ったのだが、相変わらずアレクは気付かない。

「あ、アレクさん……」
「もー、遅いですよアレクさん!」
「すまんね。どーにかして抜け出せんもんかと考えてて」
「えーと、流石に此処から抜け出すのはヴィヴィオも無理だと思うんですが……」
「むぅ、やっぱ無理か……」

 合流したヴィヴィオにまで否定されたので、アレクは回避不可能と漸く諦めた。
 壁を登る事も山を砕く事も出来ないのであれば、壁を砕き山を登りきれる程に強くなるしかない。到達すれば、口出しなど出来なくなるだろう。

「……上等だ、俄然やる気が出てきたぜ」
「……もしかして転移を覚えるんですか?」
「面白い事言うなぁ、ヴィヴィお嬢。こちとら腹据えたってぇのに今更逃がすか」
「え、逃げようとしたのアレクさんじゃ……ない? クリス、わたし何か勘違いして……なかったよね。でも他に……どーゆーこと?」

 ヴィヴィオは漸く話が食い違っている事に気付きアレクと共に居たクリスに訊くが、間違ってないと返ってきたので混乱してしまう。
 だが未だ気付かないアレクは先を促すリオに応じ、放って行ってしまった。

 その一部始終を見ていたルーテシアがノーヴェにポツリと呟いた。

「アレクってさ、ほんとに面白いよねぇ〜色々と」
「……まあ、否定はしない」


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