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覇王と修羅王
合宿編
十二話
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思える。
 だが、この回顧録でもアレディ・ナアシュの文字は無い。

「ねえねえアレクさん、アレディ・ナアシュってどっかの王様だったんですよね?」
「らしいね。アインハルトは修羅王とか言ってたけど」
「それで決闘ぽい事やってたなら、一人の時に会ったんですよね?」
「乱世だから結果的に一人に成った、とかじゃねえの?」
「あと、何処で会ったんでしょうね。乱世だからやっぱり戦場かな? ルーちゃん、それっぽい記事ってある?」
「ちょっと待ってねー」

 リオとコロナの会話も耳に入れながらページを捲る。
 オリヴィエと別離後、修羅王、戦場、一方的な敗北。幾つかのキーワードや類似している言葉を浮かべながら探すが、個人的に会い瀕死のように成った、若しくは一時期姿を消したような記述は無い。
 となると、出会った場所は戦場だろう。加えてクラウスが倒れるような記事があれば、近いかもしれない。そう思い捲っていたルーテシアの手が止まる。
 和平交渉へ赴いた師団が、ただ一人の手によって皆瀕死の状態で横たわっていた。その一文に目が留まった。

「これかも……」


◆ ◇ ◆


「じゃあ、最初は和平を結ぼうとしたんですか?」
「はい。使者を送り待っていましたが、其処に現れたのは彼一人でした。一軍を前に、威風堂々と立っていました」
「でも戦ったって事は、決裂したんですよね?」
「彼の要求は不干渉でしたが、戦乱の世では懐疑心が常に生まれ、他国の人を前に余裕もありません。決裂と早合点した者が、剣を抜きました。高が小国の王一人、そう侮っていたのかもしれませんが……」

 ――戦いにすら成らなかった。
 近づけたものは最初に斬り掛かり撃ち飛ばされた一人だけで、後に続く者は皆、拳より撃ち放たれる幾多の龍により、枯れ木の枝のように吹き飛ばされた。
 すぐに嵐は通り過ぎ、静寂は訪れたが、辺り一面は喰い荒らされた痕が残り、遥か後方では瀕死の身が連なっていた……。

「龍……」
「一分にも満たない時間でした。たった十数秒、たった一人の手で……師団が壊滅しました」
「それでクラウス殿下は、戦いを挑んだんですか?」
「はい。始めてしまった戦いを終える為、倒れた部下の為、クラウスは彼と対峙しましたが……」

 ――それ以上に焦がれていた。
 此れが、此れこそが一騎当千と呼ぶに相応しい力。何もかも変えられる力。彼女の微笑みと曇らす事も、運命さえも容易に覆せる力!
 そして、この男に勝てるのならば、必ず手に入れられる――――強さを! だから此処で敗れても、越えるまではっ!!

「それから、クラウス殿下はまた……?」
「いえ、戦乱の世では他に割かなければならない事も多く、再び逢い塗れる事は叶いませんでした。……だからクラウスは一騎当千の力
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