紡がれた言葉は傷を癒して
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「・・・もちろん」
押し寄せてくる感情に、名前を付けられなかった。
喜び、悲しみ、怒り・・・そんな一言じゃどうにも似合わず、この世界に存在する言葉全てを使ったって表せないような、複雑な感情。
そして―――――この優しき恋人の言葉でしか呼び覚ませない、温かな太陽の光のような感情。
それに名前を付けるほど、アルカは言葉を知らない。
「こんな小さい事でこんなに悩んでる、バカでどうしようもないオレを・・・愛してくれるのか?」
そう問いかけながら、アルカは密かに笑みを浮かべる。
こんな事、聞くまでもないじゃないか。
さっきから、否、ずっと前から、ミラはこの言葉に対して答えてくれている。
「うん」
ただ、ミラは頷いた。
微笑んで、最低限で最大限の言葉を呟く。
それだけで、十分だった。
「今のうちに言っとくけど・・・やっぱり別れるとかナシな?」
「うん」
「もう別れてやんねーぞ。別れ話されたって明後日の方向いてやる」
「じゃあ私も、アルカがまた別れ話してきたら明後日の方向くよ?」
「安心しろって。もう別れてやんねーから」
ケラケラとアルカが笑う。
そして、腕をミラへと伸ばした。
そのまま抱き寄せ、バランスを崩したミラの耳に口を寄せ、囁く。
「・・・もう、2度と離さねーよ」
砂糖を煮詰めても、どれだけのスイーツを用意しても足りないような甘さで構成された声が、ミラの耳を擽る。
「・・・うん」
恋人の傍にいられる嬉しさが込み上げる。
頬を赤く染め、ミラは頷いた。
【愚かな人間共め・・・ついに動き出したか】
静かな森の中。
そこに、美しい青色の光が舞う。
木々の間を軽やかに通り抜け、くるりと回り、舞い踊る。
【我が一族も随分と低俗な事を・・・12の時を持つ巫女よ、主に時を超えた巫女を愚弄する権利はない】
青い光は、強弱する。
笑うように、怒るように。
【人間ではない巫女・・・見せてもらうぞ。せいぜい楽しませておくれ】
響く声は、遠くなっていく。
光が弱まり、消えていく。
【“絆”という、見えぬ不確かな繋がりが、どれほど確かなものか――――――】
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