紡がれた言葉は傷を癒して
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の脚を止める、枷になるのなら―――――――
「私が心から愛する人を好きでいる事は、ダメなんかじゃない」
どれだけ自分に似合わない言葉も、紡いでみせる。
本気でミラは思った。
「っ・・・けど!解ってんのか!?オレは闇ギルドの奴の息子であるだけじゃなくて、お前の妹を救えなかったんだぞ!?お前の目の前でリサーナ死なせちまったオレが・・・お前の前にいていい訳がねぇじゃねーか!」
ルーが矛盾を抱えたように、アルカもまた、矛盾を抱えていた。
ミラが好きで傍にいたいと思うと同時に、リサーナを救えなかった人間がミラの前にいてもいいのか、と。
元々抱えていた矛盾と、今回の件。2つがぶつかって合わさって・・・アルカは別れる選択をしたのだ。
「いていいんだよ」
だが―――その矛盾を、ミラは一言で消し去る。
解除魔法をかけたように、一瞬で消え失せる。
「リサーナが死んだのはアルカのせいじゃない・・・ううん、誰のせいでもないの。だから、アルカが私の前からいなくなる理由にはならないし、なれない」
優しい微笑み。
ギルドで人気の、天然看板娘の笑顔。
大陸中が酔いしれたという美しい、ギルドが誇る看板娘。
「私・・・アルカの傍にいたいし、傍にいてほしい」
その両手を、ふわりと包む。
じわりと熱が滲み、優しさが流れる。
「お願い・・・別れるなんて、言わないで」
その目に、再び涙が浮かぶ。
アルカは俯き、ゆっくりと口を開いた。
「・・・いても、いいのか?」
「うん」
「オレは弱いんだぞ・・・ティアみてーに素早く相手を殲滅出来る訳でも、ルーみてーにスゲェ防御が出来る訳でもない。全部中途半端で、お前1人満足に守ってやれないんだ。それでも、いいのか?」
「中途半端でも、アルカにしか出来ない事もあるでしょ?それだけで十分よ」
「数えきれないほど泣かせるかもしれねーし、辛い思いをさせるかもしれねぇんだぞ」
「そうね・・・でも、アルカの傍にいられるなら、数えきれないほど泣いたっていいよ」
アルカの体が小刻みに震える。
涙は流れない。
ただ―――――気づいたのだ。
(オレは・・・)
ぐっと、噛みしめる。
ミラの紡いだ言葉全てがアルカの脳内で無限に再生され、深い傷を癒していく。
(―――――――こんなにも、愛されてやがったのか・・・)
知らなかった。
付き合っているのだから、好意がある事は当然であり、勿論知っていた。
だが―――ここまでとは。
優しく微笑む恋人は、自分の全てを受け入れ、全てを認め許し、全てを愛してくれている。
「好きでいて、いいんだな?」
「うん」
「愛してて・・・いいんだよな?」
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