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Element Magic Trinity
紡がれた言葉は傷を癒して
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「別れたいっつってんだから別れてやれよな」と。
でも、今はそんな事思っている余裕もなかった。

「!」

ミラが目を見開いた。
それと同時に、じわりと体を包む熱を感じる。
炎使いの体温は並より高く、何も羽織らず街へ飛び出したミラを温かく包んだ。
僅かに視界に映る深紅色の髪。
ふわり、とその髪が小さく揺れた。

「・・・嫌いになんか、なってねぇよ」

間近で聞こえる声。
その顔は、見えない。

「オレがミラを嫌いになれるハズねぇだろ。なれたら一種の奇跡だ」

そう――――アルカはミラを嫌いになれない。
ミラの涙を見ない為に大地(スコーピオン)を取り戻したアルカが、嫌いになんてなれるハズない。

「悪いのは、オレだ。全部オレなんだよ」

目の前にあった事実を再確認して、アルカは声を歪ませる。
悔しさと苦しさと僅かな憎しみを、声に乗せる。

「オレの親が闇ギルドの人間だ・・・って、解っただろ?実はさ、知ってたんだよ。どういう手ェ使ったか知らねぇが、ティアが親父達のギルドに映像録画魔水晶(ラクリマ)仕掛けて、オレに映像くれたんだ。一目見てピンと来た・・・悔しい事にな」

その映像を見た時、戦う事を決めたはずだった。
相手が牙を剥くのなら、こっちも牙を剥いてやると。
だが・・・結果として、戦えなかった。
それどころか、完全に敗北してしまった。

「つまり、だ。ミラ、お前は闇ギルドの奴の息子と付き合ってるっつー事なんだよ。そんなのダメだ。だったら別れた方がいい。だったら・・・オレよりいい奴と付き合った方がいい」

ふわりと抱きしめていた腕を解き、アルカは微笑む。
悲しそうで、辛そうで、諦めたような笑み。


「お前が幸せになるなら、オレは喜んで身を引くさ」


プツリ、と。
ミラの中で、何かが切れた。
俯き、ぎゅっとアルカの白いインナーを握る。

「・・・違う」

呟かれた言葉に、アルカは一瞬不思議そうな表情をする。
ミラが顔を上げた。

「違うっ!アルカは何にも解ってないっ!」
「おわっ!?」

いつものミラとはどうやっても結び付かない強い口調に、アルカは思わず自分でもマヌケだと認識するような声を出した。

「アルカが私の事嫌いになれないなら、私だってアルカの事嫌いになんかなれないの。アルカの側にいるのが私の幸せなんだよ?アルカがいなくなったら、私は幸せになんてなれない。不幸にしか、なれないの」

口調が落ち着きを取り戻す。

「闇ギルドの人間の息子とか関係ないよ。闇ギルドの人間の息子だとしても、私がアルカを好きなのに変わりはないの」

たとえ紡ぐ言葉が、彼の嫌うありがちなものだとしても。
放つ言葉が、彼の心に全く届かなかったとしても。

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