紡がれた言葉は傷を癒して
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「別れたいっつってんだから別れてやれよな」と。
でも、今はそんな事思っている余裕もなかった。
「!」
ミラが目を見開いた。
それと同時に、じわりと体を包む熱を感じる。
炎使いの体温は並より高く、何も羽織らず街へ飛び出したミラを温かく包んだ。
僅かに視界に映る深紅色の髪。
ふわり、とその髪が小さく揺れた。
「・・・嫌いになんか、なってねぇよ」
間近で聞こえる声。
その顔は、見えない。
「オレがミラを嫌いになれるハズねぇだろ。なれたら一種の奇跡だ」
そう――――アルカはミラを嫌いになれない。
ミラの涙を見ない為に大地を取り戻したアルカが、嫌いになんてなれるハズない。
「悪いのは、オレだ。全部オレなんだよ」
目の前にあった事実を再確認して、アルカは声を歪ませる。
悔しさと苦しさと僅かな憎しみを、声に乗せる。
「オレの親が闇ギルドの人間だ・・・って、解っただろ?実はさ、知ってたんだよ。どういう手ェ使ったか知らねぇが、ティアが親父達のギルドに映像録画魔水晶仕掛けて、オレに映像くれたんだ。一目見てピンと来た・・・悔しい事にな」
その映像を見た時、戦う事を決めたはずだった。
相手が牙を剥くのなら、こっちも牙を剥いてやると。
だが・・・結果として、戦えなかった。
それどころか、完全に敗北してしまった。
「つまり、だ。ミラ、お前は闇ギルドの奴の息子と付き合ってるっつー事なんだよ。そんなのダメだ。だったら別れた方がいい。だったら・・・オレよりいい奴と付き合った方がいい」
ふわりと抱きしめていた腕を解き、アルカは微笑む。
悲しそうで、辛そうで、諦めたような笑み。
「お前が幸せになるなら、オレは喜んで身を引くさ」
プツリ、と。
ミラの中で、何かが切れた。
俯き、ぎゅっとアルカの白いインナーを握る。
「・・・違う」
呟かれた言葉に、アルカは一瞬不思議そうな表情をする。
ミラが顔を上げた。
「違うっ!アルカは何にも解ってないっ!」
「おわっ!?」
いつものミラとはどうやっても結び付かない強い口調に、アルカは思わず自分でもマヌケだと認識するような声を出した。
「アルカが私の事嫌いになれないなら、私だってアルカの事嫌いになんかなれないの。アルカの側にいるのが私の幸せなんだよ?アルカがいなくなったら、私は幸せになんてなれない。不幸にしか、なれないの」
口調が落ち着きを取り戻す。
「闇ギルドの人間の息子とか関係ないよ。闇ギルドの人間の息子だとしても、私がアルカを好きなのに変わりはないの」
たとえ紡ぐ言葉が、彼の嫌うありがちなものだとしても。
放つ言葉が、彼の心に全く届かなかったとしても。
そ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ