第3章 聖剣の影で蠢くもの
第28話 不都合な真実
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なお無表情だ。
けれども、姉貴分の眼はごまかせない。
「それよりも、はやてはどうしたいんだ?自分の答えはもうでている、って顔しているぜ。素直に白状しろよ――――あたしたちは家族だろ?」
驚いた顔をして、こちらを見るはやてを見返して、苦笑してしまう。
なんとなく、はやてのやりたいことは分かる。
そのやりたいことが、いまの日常や平穏を壊す結果になることも。
だが、それがどうしたというのだろう。
「ヴィータの言う通りだ。我々は、主はやてにつき従う騎士だ。しかし、それ以上に家族として大切に思っている」
「水くさいこと言ってはだめよ、はやてちゃん。家族の前ですら話せないなんて。わたしたちは、そんなに頼りないのかしら」
「共に悩み、共に歩む。主よ、われら家族の絆は、それほどまでに脆いとお考えか」
「ええ。マスターも仰っていたではありませんか。『家族の間で隠し事はしないように』と。忘れたとは言わせませんよ」
口ぐちに言葉を投げかける。それは、家族たちの思いの代弁であり。
頼ってくれない悲しみであり。主を想う優しさであり。背中を押そうとする励ましだった。
「え……皆。でもボクは、ボクの願いは。僕が願ったことは――――」
「ほら。まずは、あたしたちに全て話せ。どうするかは、あたしたちが決めることだ。
はやての責任だとか言うなよ?あたしたちの意思を軽んじる発言だぜ?」
――――あたしは、八神はやてのことならなんでも知っていた。
「ありが、とう」
言葉に詰まりながらも、はやては続ける。
「これは『八神はやて』の望んだもの。彼女の願い。ボクの願い。とても痛ましくて、禍々しくて、歪んでしまった願い。とてもとても純粋な悪意――――」
一度言葉を区切り、深呼吸しながら言う。
「きっと、誰もかれもが立ちふさがることになる。みんなも巻き込まれれば、不幸になるかもしれない――いや、きっとなるだろう。明るい未来なんてどこにもない。でも、それでもっ、力を貸してくれますか……?」
幼子のように不安に揺らぐ瞳を向ける少女。
そんな少女に、家族のだれもが力強く賛成した。
張り詰めていた空気を弛緩させ、涙をこぼす妹分を見ながら思う。
はやては、自分たちにとって守るべき主であると同時に、大事な家族だ。
一家の大黒柱である彼女の立場を表現するのは難しい。それは――
主であったり。
娘であったり。
妹であったり。
仲間であったり。
――とても、一言で言い表すことはできないだろう。
けれど、あたしにとって、はやての存在は――
(もしも、あたしに「お母さん」がいるとしたら。はや
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