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『八神はやて』は舞い降りた
第3章 聖剣の影で蠢くもの
第28話 不都合な真実
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しく、ずいぶんと古ぼけていたが、使いこまれていることが見て取れた。


「死を前にした、少女は願った。自分を守り殺された両親に慟哭し。庇われた自分が今まさに死のうとしている事実に絶望し。目の前の異形に激怒した。ありったけの負の念を、憎悪を込めて祈ったんだよ」


 無表情ではやては続ける。


「居もしない神様は聞き届けてくれなかったけれど、ね。幸か不幸か。奇跡も魔法もあったんだ」


 ――――あたしの知る八神はやては、凛々しく毅然と振る舞っていた。


 日記には、父と母について、色々なことが書かれていた。
 二人が、いつどこで出会い、どうしてここで暮らし、どうやって今まで生活してきたのか。
 二人が、何をして、何を思い、何を願ったか。
 二人が、どれだけ娘を愛していたか。


「日記に書いてあったよ。5歳のときに『青白い光が娘を包んだ』と。神の祝福だー!と、無邪気に喜んだ様が書かれていた。親ばかだったようだね。けれども、それ以上にアザゼルにバレたとき、アザゼルによって人体実験に晒されるのではないか、と恐怖がつづられていた」


 ――――あたしの知る八神はやては、家族を愛し守ろうとする強い少女だった。


「奇跡の正体は、青白い光。少女は死亡し、その世界では終わってしまった。さすがに、『消滅の魔力』を受けてしまっては、蘇生できなかったようだね。その一家は、皆殺しになり、それでおしまい。物語にあるような奇跡は起きなかった。だって、彼女は、『魔法の力』も『夜天の書』も『原作知識』も持っていなかったから」


 あたしは、はやての両親を知らない。起動したときには、二人は既に殺されていて、主を守ることで精いっぱいだったから。
 けれども、父の亡骸にすがり、すすり泣いていた姿から、分からないはずがない。 
 はやては、間違いなく両親を愛していたし、両親もまた彼女を愛していた。



「だからこそ、『この世界』の自分に願いを託したんだ――世界も、時間も飛び越えて。けれども。悪い奴をやっつけて、ハッピーエンドにはならなかった。だって、願いは歪められてしまったから。そう。それは、願いをかなえるロストロギア――――」


『家族を殺した奴らが憎い』
『仇を討ち、復讐したい』


「この願いには、重大な欠点があった。だって、『憎む対象が居ないと、この願いは成立しない』んだよ。生きている家族の仇討なんてできないだろう? つまり、『家族が殺され』ないと、怨むことも、復讐することもできない。ばかげた話だ。だから、結局、両親はまた助からなかった」



 ――――あたしの知る八神はやては、泣き虫で傷つきやすい幼子だった。 


 一緒に暮らしているからわかる。はやては、誰よりも、何
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