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『八神はやて』は舞い降りた
第3章 聖剣の影で蠢くもの
第28話 不都合な真実
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ろう。


「彼は、娘とともに静かに暮らしたいだけだったのに、ね」


 
 エクソシストは、苦しむ。
 父として、娘の未来を守ってやりたいから。
 だから、彼は、は隠れることにした。


「けれども。彼らには、逃亡先に当てがなかった」


 天使たちは頼れない。
 エクソシストを殺そうとするだろう。


 堕天使たちは頼れない。
 娘を人質にとるだろう。


 悪魔たちは頼れない。
 エクソシストは恨みを買いすぎた。


「裏に関わった人間が、表で生活することは難しい。いや、裏の現実を知っているからこそ、娘には日常を与えたかったのだろう」


 彼は必死に考える。


 天使たちは、二人を追っている。
 堕天使たちは、二人を探している――――けれども。
 悪魔たちだけが、二人に関心がなかった。


「逃避行の果てに、行きついたのが、駒王町だったわけだ。現魔王の妹が昼を管轄しており、干渉されにくい土地。その妹も幼いせいで、管理体制はずさんだったようだしね」


 父と娘は、ある悪魔の領地で暮らし始める。
 娘とともに、日常を過ごそうと、決意した。
 娘のために、平穏に暮らそうと、決断した。
 彼の望みは、小さな幸せ。ただ家族と暮らすこと。
 彼の願いは、娘の幸せ。ただ日常と平穏を得ること。

 
― ―――そんな、どこにでもいる家族の話だった。 





 ――――あたしは、八神はやてを知っている。


「と、いうわけさ。まあ、ありがちな物語だね。最後は、はぐれ悪魔が、『偶然』やってきて殺されたわけだ。『何故か』エクソシストに気づかれることなく、ね」


 無表情で、はやては語り続けた。感情の読めない顔をしながら、淡々と続ける。
 その痛々しい姿に、あたしは何も言えなかった。八神ヴィータとして一緒に過ごしたあたしでも、初めてみる姿だ。
 発端は、紫藤イリナとの出会いらしい。面識のないはずの彼女から、親しげに話しかけられた。しかし、彼女と過ごした記憶はない。
 疑問を感じて、過去を振り返ってみれば、あたしたちと会うまえの記憶が酷くあいまいでおぼろげだ。


――――あたしの知る八神はやては、優しく慈愛に溢れていた。


「母は娘を産んで死に、父は、娘をかばって殺された。けれども、一人娘も結局、殺された。物語にあるような、奇跡なんて起こらないさ――通常なら、ね」 


 不安を感じたはやては、帰宅した後、両親の寝室を兼ねた書斎を調べた。
 その部屋は、様々な想いが詰まっており、長らく掃除だけして保存してあった。
 手紙やアルバムに書籍と、雑多なものが置いてある。その中に、父の手記を見つけた。
 どうやら、日記ら
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