曹操聖女伝第1章
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廷の腐敗に飽き飽きしていた曹操は、気晴らしに町の外に出る事にした。
静かな微風の音、草や木の生き生きとした匂い、動物の力強い姿。どれも醜い権力争いの震源地と化した大都市・洛陽では得られぬ者であった。
「こいつらを見ていると……権力が邪魔な足枷に見えてくるよ」
しかし、突然鳥達が大慌てで飛び去って行った。曹操も不穏な気配を感じてとある商人から買い取った輝く星のような七つの宝玉が埋め込まれた黄金の剣を正眼に構えた。
「おっ!?兄貴ー!すっげー凛々しい美女がいやすぜ!」
どうやら山賊の様だが、何故その程度で鳥達は大急ぎで逃げるのだ。
「何奴!」
野蛮な目つき、薄ら笑いを浮かべた口元。正に奪う事しか知らぬ下衆であろう。
だが、この者達もある意味醜い権力争いの震源地と化した大都市・洛陽の犠牲者だ。曹操は正直殺したくない。が、
「ん?どうした?何を騒いでる?」
山賊の頭の顔を見た途端、曹操から不殺の想いは消えた。
「どうやら化けの皮を剥いで欲しいようだな」
曹操は静かに深い大義の怒りを両目に宿しながら山賊の頭を睨み付ける。
「おや、立派なもんを持ってんじゃねえか」
「そりゃ金になりそうだな。おい、とっ捕まえろ!」
曹操は一歩も後退する事無く余裕の表情を見せ、
「ほう、抜くか?抜くと言う事は……斬られても文句は言えないぞ!」
そんな曹操を山賊が嘲笑う。
「斬られても文句が言えないだと……そんな玩具の剣で何が出来る!」
「しかも見ろよ、あの女の左手……まるで蠍だぜ!」
「こりゃいい。蠍手の女……受けるぜぇ!」
先に仕掛けたのは山賊の方だった。だが、曹操が持つ装飾品の様な剣を侮った報いを早々と受ける事になった。
この剣こそ……通天教主が人間の商人に化けた弟子を介して曹操に与えた宝貝である。
その名は七星剣。使用者を剣術の達人に変え、使い手の思い次第で切れ味を自在に変えることが出来、峰打ちから岩まで何でも切ることができる。
曹操は迫り来る山賊を鮮やかに叩きのめしていく。
「お前達に用は無い。私はお前達の親玉に用がある」
呼ばれた山賊の頭の頭が不満な顔をした。
「嬢ちゃん……俺を嘗めてんのか?」
曹操は鼻で笑った。
「ふっ、化けの皮を剥がされてもその様な事が……言えるか!?」
曹操の七星剣の光線を浴びた山賊の頭の後頭部から“もう1本の腕”がニューと伸びた。
「うわー!化け物だー!」
頭のもう1本の腕を見た山賊達は蜘蛛の子を散らす様に逃げ去った。鳥達が大慌てで飛び去ったのも山賊の頭の邪凶としての気配に気付いたからであろうか。
「おのれー……この馬元様の最後の切り札を見抜きおったなぁー」
馬元は怒っていた。そして、少し……焦っていた。
曹操は冷静な態度を崩さない。
「まあ……中凶と言った所か……」
仙人や妖怪は
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