曹操聖女伝第1章
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た。
この混乱を好機と見たのか、仙邪戦争で戦死した魔王の内の3匹が……魔王の力を持ったまま人間に転生してしまったのだ。
このままでは、紀元前18世紀頃の邪凶の勢力がまだ強大だった頃の様な状態に……いや、ここまで地上界に暮らす人間が此処まで腐ったとなると……。
困り果てながら地上界を徘徊していた通天教主は、いつの間にかこの村に到着し、西暦二世紀頃の中国では珍しい姿の1歳の少女を発見する。
「この娘の左手の指は……強い善意と良心の表れか」
通天教主はふと思った。この者が地上界を統治すれば邪悪の付け入る隙が無くなるのではないかと。
思い立ったが吉日とばかりに碧遊宮に戻り、小さなビー玉の様な宝貝を産み出した。そして、その宝貝を少女に移植した。
4年後、通天教主に気に入られた少女が暮らす村に山賊が押し入った。
少女の父親は勇猛果敢に戦ったが、さすがの百戦錬磨も数の暴力が相手では分が最悪過ぎた。父親は敗れ去り、母親も娘を庇って死亡。このまま少女も殺されるかと思われたが、偶然通りかかった宦官の護衛隊によって山賊は駆逐された。
両親を失い途方にくれる少女を不憫に思った宦官は、この娘を養女として育てる事を決意する。
この宦官の名は“曹騰(字は季興)”。欲望に正直な他の宦官とは違い、慈悲深く礼節を重んずる名君と呼べる傑物である。
少女は曹騰の屋敷で生活する事になったが、元貧民である事、宦官の孫である事、やはり2本指の左手も悪質なイジメの原因になった。一度は自殺も考えたが、ある日、少女の耳に“天の声”が届くようになった。
「天下は乱れようとしており、当代一の才の持主でなければ救う事はできない。天下をよく安んずるのは君である」
それ以来、橋玄(字は公祖)の弟子となり読書によって智を磨き、狩猟で体を鍛え、いつか訪れるかもしれない激戦に備えた。
そして、少女は20歳のときに孝廉に推挙され、郎となった。長い髪を後ろで一つに束ね、落ち着いた物腰とどんな時でも凛々しく振る舞う姿から、男性は当然の事、女性からも憧れを抱かれる絶世の美少女に成長していたのだ。ただ、彼女の美には2つほど問題を抱えていた。
一つはやっぱり左手の指が2本しかない事。もう一つは肉体年齢。通天教主に埋め込まれたビー玉の様な宝貝の影響によって15歳で肉体年齢の加齢が完全にストップしてしまい、身体は非常に若く、またスタイルも良い。
少女が孝廉の郎となったと知った曹騰は、少女の男装時の愛称を与えた。
“曹操(字は孟徳)”
と。
洛陽北部尉に昇格していた曹操は、好き好んで外の見廻りの任に励んでいた。市中の人達の喜怒哀楽を、肌で感じ取れるからだ。
だが、聞こえてくるのは山賊の活動の活発化ばかりであった。
「上が腐れば下が苦しむ……これが醜い権力争いの末路か」
朝
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