曹操聖女伝第1章
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時代は西暦二世紀頃。場所は中国。
一人の男性が寝ているまだ1歳の少女を見下ろしていた。少女は珍しく容姿をしていた。髪は金髪で、左手は指が常人の1.5倍の大きさの中指と薬指のみであった。恐らく、蟹の手と呼ばれ、山ほど苛められるだろう。
左手の2本指はともかく、金髪には理由があった。彼女の両親は中国人ではないのだ。
父親はローマの剣奴(円形闘技場で民衆の娯楽のために真剣勝負を強制された奴隷。捕虜出身が多い)、母親はローマに滅ぼされた国家の末裔。二人は共にローマから逃げ、漢王朝の端にあるこの農村に拾われ、此処で用心棒の仕事をしながら暮らしていた。
男は残念そうに思いを口にした。
「嘆かわしい……折角奴らから守り抜いたこの地上界が……嘆かわしい……」
さて、一旦本題から離れ、この男とこの男が言う奴について語ろう。
その所以は紀元前18世紀頃まで遡る。
この頃の中国大陸は“邪凶”と呼ばれる異界の生物、俗に言う悪魔や魔物が跋扈し、不幸と混乱に導かれようとしていた。だが、それに敢然と立ち向かう者達がいた。
一方は“仙人”。
人里を離れて山中に住み、陰陽五行説を思想の背景とし、不老長寿等と言った様々な道術を会得した人間達。
もう一方は“妖怪”。
人以外の生物、あるいは無生物が長きに亘って月日の光を浴びて魔性を帯び、最終的に人の形を取れるようになった者。
両者とも、森羅万象の理を重んじ、自然の摂理を尊ぶ高貴な思想を持つが故に、自分の欲望の為に殺戮を繰り返し、破壊と悪行の限りを尽くす邪凶を許せないでいた。
そして、この男こと“通天教主”は、反邪凶派の仙人や妖怪をかき集めて邪凶に戦いを挑んだ。
人智を超えた者同士の戦いは熾烈を極めたが、仙人と妖怪が共同開発した道術兵器“宝貝”の出現により戦局は一気に仙人・妖怪連合有利となり、邪凶の最上位種である“魔王”は全て封印された。
この戦争は仙邪戦争と呼ばれ、仙人や妖怪に語り継がれていった。
その後、仙邪戦争で仙人に加担した妖怪達の総大将である通天教主は、西海九竜島にある洞府・碧遊宮を総本山とする道教の一派、截教の総帥として後輩仙人・後輩妖怪の育成に努めていた。だが……。
話を西暦二世紀頃の中国に戻そう。
邪凶不在によって平和になったと思われた地上界であったが、とてつもなく愚かな形で中国大陸は不幸と混乱に導かれようとしていた。
漢王朝の皇帝の親族である“外戚”と去勢した男性官僚である“宦官”の権力争いによって政治は腐敗してしまった。今までの中国大陸の歴史の様に、大義を重んじる地方領主が立てばまだ救いはあるのだが、出世用の賄賂の工面に没頭しており、正直期待出来ない。
貧民にとって政治腐敗は……冬の訪れである。その為、八つ当たりするかの如く、貧民の強盗化・山賊化が社会問題となってい
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