給食の恨みと疲れる話
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機械的に繰り返している。表情は乏しく、息使いだけが海星を人間だと証明する手がかりのようだ。
そんな海星を、明子は誇らしく思うと同時に後悔の念を抱く明子。
海星は強くなった。だけどそれは表の面だけの話だ。つまり殻を破れば中身は未完成なのだ。それではだめなのだと、明子はため息をつく。
それでは、生きてはいけない。
「……心配するな」
「冥星、私を気遣ってくれるのか」
眠気の収まり、頬杖をつく冥星の隣で泣きそうな横顔を見せる母親代わりの女に慰めの言葉を告げる。
何も心配することはない。なぜならば、そんなものは必要ないからだ。この先も、ずっと。
「ところで冥星……お前はどこに行くつもりだ?」
「見てわからないのか? 朝飯を探しに行くんだ」
「残念ながらそんなものはない。訓練をサボるようなただ飯ぐらいのガキに与える兵糧など皆無だ」
「……ゴリラァ……どこまで俺を苦しめれば気が済むんだ!!」
「黙れ。海星! 相手をしてやれ! 容赦するな、レディをゴリラ扱いする輩など滅んでしまえ!」
首根っこを?まれ冥星は庭に放り出された。そういう行為がゴリラと言われざるを得ないことを千の文字で伝えたいのだが、いかんせん時間が足りないため今はよしておこうと思う。
今日は厄日だ。というか連日厄日が続くのはどうしてだろうか。目の前には兄を兄とも思わない妹が、睨み付けるようにこちらを見ている。既に少女は態勢を整えており、どこからでもかかってこいとでも言いたげだ。
「……やだやだ……高貴な俺は、こんな野蛮な遊びには付き合わなくてよ」
「……逃げるんだ。さすが兄貴、カス、屑、人類が生んだゴミ」
ごめんあそばせ、と吐き捨ててさっさと庭を去ろうとする冥星を、明子は止めようとはしなかった。本人にやる気がなければ訓練はお互いの身にならないことをわかっているからだ。冥星がやる気を出したことなど皆無に等しいが、それでも明子はいつかこの兄妹が仲良くなれる日を願っている。今日はちょっと、急ぎすぎただけなのだと。
「――――お姉ちゃんみたいに死ねばいいのに」
冥星は聞こえないふりをして、明子は海星を咎めようとした。
冥星は振り返らない。振り返ればきっと海星を憎んでしまう。それは負けだ。アウトだ。自分にそんな感情は不要であり、妹程度にそんな労力を割く必要などない。
それでも言っていいことと悪いことがある。それくらいの倫理観を持ち合わせていないというのは明子の教育が悪いのであって、自分のやることは決して正当な行為なのであってつまり冥星は振り返ってしまったのだ。
「! 冥星! やめろ! 冥星! おい!」
「くふふ…………なに? そんなにお姉ちゃんのことが好きだったの? そうだよね? だってさぁくふふ……」
「フー……
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