給食の恨みと疲れる話
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星と、『元』彼氏にしたいランキング一位の達也。微妙な距離感を持つ二人の会話は、初々しくて、まだ自らの感情を持て余しているようだった。目の前で恥ずかしい会話を繰り広げる二人をこのままにしておくわけにはいかぬと、バカ代表の隼人はリーダーに救援を仰ぐ。この場を無差別に破壊できるのは空気を読まぬ、というか空気そのものが存在しない冥星だけなのだ。
「おい、冥星……お前の妹が大変なことになっているぞ」
「あいやまたれぇぇぇぇぇい!!」
「きいてねぇし……ってお前懲りもせずにまた……」
ところが、冥星の目的は残念ながら二人の少女を泣かせることだ。自分が陥った屈辱と同じくらいにダメージを彼女たちに与えることが、自分の宿命といっても過言ではない。ちなみになぜ腹が立っているのかを、冥星は説明することができない。忘れているからだ。ただ腹が減って苛立っているだけ、ともいう。
「また……あなたなの」
「姫、下がりな。私が潰すから」
ゴリラ女こと六道凛音は主人である大蔵姫に襲い掛かる白い怪物に牙を向ける。なぜ、とかどうして、とかそんなことは関係ない。目障りなら潰す、姫が不快に思うなら潰す。その姿はまるで物語の騎士のように正義に満ち満ちた姿だ。
「おまえ、城島冥星だろ? 外部生の分際でずいぶん偉そうだな」
「ぬんだと? お前こそダイエットとか意味不明なことするな! 食べ物に感謝しろ! 俺に謝れ! なんかくれ!」
「意味わかんねぇよ……なんだこいつ」
「死ね、くそ兄貴」
凛音は気味の悪いものでも見たように後ずさり、兄の相変わらずイカれた言動に嫌悪感を隠せない海星ははっきりと言葉で示す。兄への暴言だけははっきりと口にする海星に目を丸くすると同時に微笑ましく思う達也。
「お腹、空いてるの?」
「見てわかんないのか? だったらお前の目は節穴だ!」
「なんで偉そうなんだよ! 姫、黴菌がうつるから近づくな! えんがちょー!」
意味のわからない言動で姫に迫る冥星を押し返す凛音。それでも無駄に力強く襲い掛かる変人に凛音は一種の恐怖を感じる。
そんな二人のやりとりに大蔵姫は、割って入る。
その手にはどういう理屈でなぜ入手したのかそしてこの場になぜ持ち合わせているのか不明な饅頭が二つ、姿を現したのだ。
「…………食べる?」
「……そんなもので、カレーの恨みが晴れると思ったら大間違いだもぐもぐ」
「……あ、二つ食べた……私のだったのに」
「世の中は実に理不尽にできているんだ。勉強になったな、ぎゃん!」
「死ね! お前マジ屑! 姫に謝れ!」
「くそ……またか……」
凛音の回し蹴りをもろに食らい、再び冥星は地面にひれ伏す。だが後悔はない。饅頭のためなら、このくらいの痛み、甘んじて受けよう。例えまた視界が闇に落ちて
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