第1部
第1楽章 内乱
第3話 光の弓矢
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んですよ。ですが、この戦争で徴用です」
「そうか……」
野部はそう言いながら引き金を引き、建物に潜み機関銃で友軍を釘付けにしていた敵を壁ごと打ち砕いた。対物兵器なのだからこれくらいできて当然だ。
敵が視認できなくなれば、別の銃眼に移って射撃を継続する。そうやって、スコープを覗き続けていた時、何かを見つけた。建物の陰で何かが光ったのだ。スコープの倍率を上げると、それが如何に危険な物かと分かった。
「対戦車擲弾発射機!!」
野部はそう叫ぶと、銃を投げ捨て、身を低くした。すさまじい爆音と共に体が揺さぶられ、砂埃が舞い上がり、肺に入って咽返る。だが、それだけで終わるはずもなく、次々と爆発が起こり、壁の破片が体に叩き付けられた。
クソッタレ、そう野部は悪態を吐いた筈だった。だが、何も聞こえない。兵士たちを守っていた壁は無残にも大穴ができ、外が見えた。外壁はもっと悲惨だろう。中では兵士たちが身悶えていた。
「大丈夫か?」
野部は砂煙が収まるころに、兵士たちに声をかけた。幸いなことに、彼の聴覚は戻り始めていた。
「何……とか……」
本村が弱弱しく返事を返し、野部に尋ねた。
「いったい何が?」
「敵の対戦車擲弾発射機の集中射撃を喰らったんだ……。急いでここを離れなければ……」
「了解」
本村はそう言いながら、立ち上がった、筈だった。彼の胴体は真っ二つにされ、床へと落ちる。
「スナイパーだ!」
誰かがそう叫び、兵士たちが動きを止める。だが、急いで部屋から出ようとした者も居た。その者の末路は至極明快だった。右足を吹き飛ばされ、胴体を撃ち抜かれた。その体には大穴が開いた。
三村は慌ててスモーク・グレネードを投げた。視界さえ遮れば、奴らはこちらを狙えない。だが、それが晴れてしまえばお終いだ。
複数の機関銃から放たれた銃弾が部屋の中に飛び込み、壁をボロボロにする。どうやら敵は何としても、こちらを始末する気らしい。
「急いで部屋から出ろ!!」
その言葉と共に兵士たちは匍匐して部屋を出る。兵士たちは部屋から出ると、それぞれ別の火点に散らばっていった。野部は機関銃チームを引き連れて絢のところに向かった。
雨のように降り注ぐ銃弾は兵士たちの動きを拘束し、ゆっくりと、だが確実に彼らの命を奪っていく。山田絢一等軍曹たちも、押されて、瓦礫の山から建物の中に移動していた。
「まったく、三村とは連絡が取れないし、本隊は来ない。まったく最高だぜ」
絢はそう言いながら壁にできた大穴から身を乗り出して、銃弾が降り注ぐ中、身を挺して89式小銃U型を構えた。敵との距離は100mあるか無いかだ。敵は20名ほどで、制圧射撃で援護しながら、交互にこちらに向
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