第五十九話 セアの家
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
いたのでした。』
挿絵にオオカミの遠吠えに怯える街の人々と寂しさのあまり涙を流しながら遠吠えをするオオカミが描かれている。
お互いの事を知らないが故にこんな状況になっているのだ。
『そんなオオカミの姿をみかねた街の狩人は、手助けをすることにしたのです。
「オオカミよ。何故あなたが人に恐がられるのかわかりますか?
それは、あなたの姿が怖いからなのです。」
どうしたらいいのかとオオカミが尋ねると狩人は言いました。
「あなたに人の姿になる魔法をかけてあげましょう。」
その言葉が終わると、オオカミは人の姿に変わっていました。
感謝するオオカミに狩人は忠告しました。
「あくまで姿だけで人に変わったわけではありません。
決して声を出してはいけませんよ。
あなたはオオカミなのですから――。」』
挿絵にオオカミを哀れんで人の姿になる魔法をかける狩人の姿が描かれている。
『人の姿になったオオカミは、森を抜け街に向かいました。
これで友達をつくることができる。
顔には眩しい笑顔を浮かべていました。
通り過ぎる人は皆、誰だろう?と不信がりましたが、
その笑顔に緊張を解き歓迎するのでした。
これまで恐ろしい形相の顔の人しか見たことがなかったオオカミは、
街の人から向けられた笑顔に感激しました。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りは暗くなってきました。』
挿絵に人に化けたオオカミが嬉しそうに街を歩く姿が描かれている。
今までオオカミに描かれていた寂しそうな顔が嘘のような表情だ。
『オオカミは森に帰りました。
人の姿は元に戻り、口を閉じる必要はなくなりました。
けれど、もう遠吠えを上げることはありません。
今日という素晴らしい日を狩人に感謝しながら眠りにつきました。
そんなオオカミを、狩人は優しく見つめるのでした。
そして──。
山と海に囲まれた小さな街。
豊かで平和なこの街には。その昔、ひとつの心配ごとがありました。
しかし、そんな心配を抱くことはもうありません。
街では勇敢な狩人を称える声が響き渡っていました。
その声は、街人を震え怖がらせることもなく、
いつまでもいつまでも止むことはありませんでした。
──オオカミの大群が街へ向かってきていることに気付くまでは。』
挿絵に街に迫る腹をすかせたオオカミの群れが描かれている。
寂しさを紛らわす為に、大きな遠吠えをあげて自分の縄張りを築いていたオオカミが死んだが為に。
「救いようがない話だな」
バッシュは読み終わった本をそう評した。
「俺は結構好きなんだけどな」
セアは探していたレポートを数枚拾い上げて、整えながら話す。
「基本、生物は無知だ。それが故に喜劇や悲
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ