暁 〜小説投稿サイト〜
ゴミの合法投棄場。
狂愛。
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より深く君に惹かれていく自分を自覚していた。 どうか――どうか、私と付き合って欲しい」

 百合は目を見開き、口元に手を当てて生徒会長の瞳を見つめ返した。 やがて、生徒会長が本気であることを察すると、口元の手をおろし、カタリと椅子から立ち上がって、柔らかな笑みを浮かべた。

「キッモ……一年間も私をそんな目で見ていたなんて……汚らわしい。 もう二度と私に話しかけないで貰えます? さようなら」
「ま、待ってくれ!」

  慌てて立ち上がった生徒会長は、笑顔のまま辛辣な言葉を言い放ち立ち去ろうとする百合の腕を掴み引き止める。

「百合、君は私の気持ちに気付いていたはずだ! 分かっていて、ずっと一緒にいてくれたのだろう!? 好きなんだ、本当に――わ、私を捨てないで!」

 見っともなく泣き縋る生徒会長の手を百合は無情に振り払い、顔を嘲るように歪め、今までかぶっていた偽りの仮面を脱ぎ捨てた。

「さわんじゃねーよ、キモイんだっつーの。 何で私がてめぇごときの気持ちを思いやらなくちゃならねぇんだよ。 私が今までてめぇと一緒に居てやったのは生徒会長っていう役職が魅力的だったのと、嫉妬して絡んでくる連中が面白かったからってだけ。 もう任期が切れるし、正直飽きてたから丁度良か――っあ?」

 不意に百合の身体から力が抜けガクリと膝を付く。 困惑したように目を見開いた百合を、生徒会長は恍惚とした表情で見つめた。

「うん……君だったらそう言うだろうことは分かってたよ――残酷で、傲慢で、愛おしい人。 だから――悪いけれど一杯盛らせてもらった。 後遺症とかは無いから安心して。 ただ、身体から力が抜けるだけ……君が私に何の興味も無いこと、知っていたよ。 ――君が相手をしてくれるだけで満足できると思っていたけど、駄目だったんだ。 ごめん、ごめんね――一度だけで良いんだ。 君と、一つになりたい……そうしたら、諦めるように努力するから――」

 悲痛な笑顔を浮かべ、百合を壊れ物のようにそっと抱き上げた生徒会長に、百合は「ふざけんなっ!」と怒鳴ろうとしたが、盛られた薬のせいか力が入らず、口が微かに動いただけで言葉にはならなかった。

 まだ授業は終わっていない。 学食を出ても誰ともすれ違うことなく、百合は階段を登ってすぐのところにある生徒会室に連れ込まれた。
 生徒会室には激務の多い生徒会役員のために仮眠室が設置されており、生徒会長は迷うことなくそこに向かうと、百合をベッドに優しく降ろした。

 百合がせめてもの抵抗にギッと睨むと生徒会長は興奮に頬を赤らめてうっとりとその視線を受け止める。

「百合……綺麗だ……」

 そんな言葉を耳元で囁かれ、額にそっと口づけられる。

 ――百合は薬で身体が動かないことを内心で感謝した。
 
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