第一部 vs.まもの!
第13話 きゅうそくおわり!
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は禁じられているんです」
「世界の果てを誰が見たと言うのだ? 誰も見た者がいない話を信じるというのか?」
ディアスが、今日は珍しく饒舌だ。
「ですが、世界の果てに関する教えは他にありません」
「アノイアの教えにはな。世界はアノイア教が全てではない。世界に字義通りの果てなどないという考え方もある」
「『世界球体説』の事か?」
ディアスの視線を受け、ウェルドは肩をすくめる。トラップカプセルを出して掌の上で転がした。
「世界球体説って?」
「簡単に言うと、世界はこういう丸い球になってるって考えだな。人も、国も、海も、山も、デカい球体を覆う薄皮一枚にすぎないって事。これは実際に大陸中を測量してまわった学者が唱えた説なんだ」
「世界が丸い!? なんだよ、それ!」
「驚くのはまだ早いぜ。世界が丸いとすればだな、その表面を切り取って、地図にして、その地図上をずーーっと西に移動したとするだろ? そしたらどこにたどり着くと思う?」
「さあ」
「なんと、地図の西の端に向かったのに、実際には東の端にたどり着くんだよ」
「…………」
パスカはぽかんとしていたが、その内机に両肘をつき、頭を抱えた。
「わけわかんねえ」
ジェシカはというと、話についてこれないと見え、座りこんだまま口をぽかんと開けて幸せそうにカーと寝ていた。ウェルドは苦笑いしてカプセルをしまった。
「世界球体説を唱えた学者は、異端審問にかけられて殺されたわ。その家族もろとも。研究内容が精査される事さえなかったの」
「ラメンツァの漂流記っていう本があるんだ。これは百年くらい前に嵐で漂流して奇跡的に戻ってきたバイレステの船乗りが書いたもので、海の向こうの知られざる島の、暮らしや植物や言葉について書かれているんだぜ。海のずーっと向こうにはアノイア教のない世界が存在するんだ。わくわくするだろ?」
「その本に書かれてること、本当なのか?」
ウェルドとノエルは顔を見合わせる。
そのままディアスを見た。
「漂流記を記したラメンツァもまた、異端審問にかけられた。ラメンツァはその際、漂流記は創作であると表明し、大幅な改稿を教会に約束した。結果、漂流記はよくできた文学作品として世に認められる事となった」
「なあんだ、なら本当の事じゃねえじゃん」
「結果だけを見て白黒つけようとするな。ラメンツァはそうするしかなかった。自分と家族のために、だ」
パスカは暫く難しそうな顔をしてから、詰めていた息を吐いた。
「……しっかし、お前等もよくわかんねぇよなー。いろんな事知ってるかと思ったら、世界は球体だとか、アノイア教が存在しない島があるとか、そんな突飛な話信じてるんだもんな」
「信じているとは言っていない。言下に否定する事はできないと言ったまでだ」
「同じじゃねえの?」
ディアス
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