第一部 vs.まもの!
第13話 きゅうそくおわり!
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術と呼ばれた物質の合成術……。これは一時期『化学』と名を改め、大陸の文明を作り変えるほどの様々な新物質が生まれるはずだった。だが教会はこの分野の学問を制限し、焚書を命じた。それにより冶金術は古代の錬金術にまで退化してしまった。今の冶金術の研究所で行われている事と言えば、ガラクタを混ぜ合わせて金を作ろうという、遙か昔に否定された実のない努力の繰り返しだ」
「研究だってタダじゃないんでしょ? 貴族とか聖職者とかの偉い奴らの事情はよくわからないけど、随分下らないことにお金を使うんだね」
「奴らは二つの物を守ろうとしている。一つは自分たちの地位、すなわち内実の伴わない研究ポストだ。もう一つは大陸の、千年続く平和」
「よくわかんないよ。どうして発明とか発見をなかった事にしたら平和が守れるの?」
「発明や発見が、アノイア教が教える『神の奇跡』をひっくり返す恐れがあるからさ」
ウェルドはジェシカに答えた。
「古代の巨大建築物だとか、現代の技術では作ることのできない物。水晶の彫刻とかが有名だな。あとは雷とか、洪水とか。そういう物は作り方やメカニズムがわからないからって『神の奇跡』とか『神の怒り』とか言われてるけど……」
「わかったぁ! 作り方とか仕組みがわかったら、神様の仕業じゃなくなっちゃうからだね!」
「冴えてるじゃねえか。そういう事。でもってカルス・バスティードの遺跡には、そのヒントが山ほど眠ってるはずなんだ」
それを読み解けば、古代の文明と技術を解き明かせば。
神の不在を証明できる。
教会と貴族連中の鼻を明かすことができる。
「わかりやすい例だと、望遠鏡の件なんかが有名ね」
と、ノエル。
「ぼぉえんきょお?」
「性能としては眼鏡に似た道具ね。ガラスが光を屈折させる原理を利用して、遠くの景色が見えるようにする道具よ。望遠鏡自体は今でも一部に流通しているわ。だけどバイレステの技術者が、長年の研究の末にとても性能の良い望遠鏡を開発すると、それは没収され、研究所には火が放たれ、技術者とその弟子は暗殺されたわ……。それが実用化されれば、航海技術に革新がもたらされるはずだったわ。大航海時代が来るとまで言われていたのに……」
「航海技術の革新? 海に出るだけの事で、どうしてそんなのが必要なんだ?」
パスカが首をひねる。
「漁をしたり、大陸の港を行き来するだけなら今の航海技術でもじゅうぶんよ。だけどそれだけじゃないわ。うんと遠くに行けるようになったら、まだ見ぬ島や、世界の果てを見つけることができるかもしれない」
「教会による航海技術の制限は必要な事です」
ルカが弱々しく反論する。
「教会の教えでは、海の終わりは果てしない断崖になっており、水が流れ落ちるだけだと言われています。そんな恐ろしい世界の果てから人命を守るために、大航海
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