高校2年
第十六話 ボロ雑巾
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、回復後も全く元通りになる保証なんてない。
(でも、不憫なのは私じゃなくて、好村本人か…)
監督室の窓から見えるフリー打撃の様子に浅海は目をやる。L字の防球ネットの向こうで、翼が一生懸命にケージの中の打者目がけて投げ込んでいた。一球一球、力を込めて投げ込んでいた。
やめろ。適当で良いんだぞ、そんなの。
浅海は心の中でつぶやいていた。
ガシャーン!
その時、大きな音が響いて、L字ネットの向こうの翼が倒れこんだ。フリー打撃が中断され、翼の周りに選手が集まっていく。翼はいつまでも起き上がらない。
「ああっ!もーっ!バカ!」
乙黒は悪態をつきながら監督室を出て行く。
浅海は虚ろな目で、その様子を眺めていた。
ーーーーーーーーーーーーー
「…………」
「で、全治2ヶ月の骨折なんやって?ヨッシー」
その日の晩、寮に帰ってきた翼は松葉杖をついていた。フリー打撃の流れ弾が防球ネットの隙間を縫って、翼の足首に直撃したのだった。
ギプスで重たくなった左足を引きずって部屋に戻ると、枡田が待っていた。
歩きにくそうな翼を見ると枡田は肩を貸してやり、ベッドの上に座らせた。翼はひどく疲れた顔をしていた。
「……俺、バッピすらマトモにできないのか」
「そんなん言うてもしゃあないですよ。あんなん事故やん。俺ら一年の準備が適当すぎたんですって」
落ち込む翼を枡田は慰める。
普段とことん舐め腐っている割には、こういう所は律儀なのだ。
「前向きに捉えましょうよ。あのまま投げてたら、ヨッシー多分肩肘どっちかいわしてましたよ?そこ壊してたら、多分もっとシャレにならへんくなってましたよ?」
「え……」
「普通に考えて、あんなバッピばっかずーっとずーっとやらせんのおかしいですやん?監督か奈緒ちゃんかは知らんけど、ボロ雑巾みたいに使い捨てるつもり満々やで、あれは」
翼は薄々気づいていた事を面と向かって言挙げされて、複雑な気持ちになった。
確かに、その雰囲気は感じられた。
かと言って、それに歯向かう気にもなれなかった。実際問題、自分はバッピくらいしか役に立てる事はないだろう。良い気分はしないが、でもそれに異議を申し立てられる程の力も価値も自分にはない。自分は、無力だ。
「ちょっと左で練習したかて、そんなん結局気休めでしかないですよ。まだ2年のヨッシーを、そんなしょうもないことに使い潰そうとするとか、ホンマ俺、ここの野球部に失望しましたわ。」
「…でも俺、バッピくらいでしか役に立たないし、文句言える立場にないよ」
「いや、それはええんですって!ムカついたらええんですって素直に!別にチームから金もろてる訳ちゃうねんし、野球を自分の為にやっても何も悪い事ありませんよ!ヨッシーを三龍に
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