第3騎 御旗のもとに
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「“力”・・・エル様が良く言われる“力の本質”ですね・・。」
彼の目には、強い意思が見られる。
「そうだ、“力”とは、必ずしも浴びせたい相手にのみ、降り掛かるものではない。未熟な者、秩序を知らぬ者、扱いを知らぬ者、暴略の者、それらの者が振るえば、傷付くのは相手だけではない。知らず知らずの内に、守りたい、助けたい、救いたい、そう言う者達に降りかかる。だからこそ、“力”を持つ者は、“本質”を理解する者でなければならない。」
私は、彼の目から視線を外して、眼を伏せる。
ルシウス王と名乗っていた時の私は、そうであった。戦争に戦争が繰り返され、経済、技術、生活が良くなろうとも、民の心は傷つき、苦しんでいた。私は、恐らく“未熟な者、秩序を知らぬ者、扱いを知らぬ者、暴略の者”であったのだ。何が、英雄王か・・・。国を大きくする事だけに囚われていたのではないか。だからこそ、“本当の平和”を見せる事が出来なかったのだ。
「エル様・・・今、エル様が何をお考えかは、分かりません。ですが、エル様は、それを知る者です。そして、その思いをする相手、傷付く相手の御気持ちになれる御方です。それは、何よりも代えがたいもの・・・。」
私は、その言葉を聞いて眼を開ける。いつの間にか、彼は膝を地面につけ、頭を垂れている。それを見て、私は声を発しようとした・・・しかし、それよりも先に彼が声を発した。
「だからこそ、私は、本心より“エル様をお慕いしております”。」
私には、この言葉が・・何よりも代えがたいものだ。彼は顔を上げ、その覚悟たる目をして言った。
「エル様の・・・御旗のもとに。」
“御旗”・・これは、アトゥス王国特有の言葉である。アトゥスの王族は、洩れなく全ての者に“固有の旗”がある。それは、色、柄、形などが決まっている訳ではなく、自分で決める事もあれば、先代の王より授かる事もある。しかし、一つも同じものがないのが、唯一の決まりである。これは、初代国王アイナ王が、“王族たるは、全ての事柄に責任と名誉を持つべし”と言う事を信条としていたからだ。つまり、国を統治する王と、その王族は国に対する“責任”と、その責任を持つという“名誉”を持つべきだという事である。それ故に、王族一人一人に、個人を表す“御旗”が存在する。“御旗のもとに”・・この言葉は、その個人に尽くす事を誓う、最上の言葉。
私が王であった時は、黒地に一輪の白い水仙の花が咲いていた。エル・シュトラディールとしては、それに習って、黒地に一輪の白いユリの花が咲いている。黒地の旗は、ルシウス王として使っていた旗だが、私が毒殺されて以来、不吉、不幸の象徴として使われていないそうだ。故に、私の旗も反対が多かったが、これを押し通した。“黒地”は何にも染まらないことを意味する。そこに咲く“一輪の白い花”は、唯
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