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英雄王の再来
第3騎 御旗のもとに
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か?」

「特に、これと言っては何もないんだけど。ただ、通り掛かった時に目に入ったから。」
私は、その“人の思いを叶える木”に目を向けて、そう言った。

「きっと、アイナ様が呼び止められたのですよ。“初陣”も決まられたと聞いておりますし。」
手を体の前で合わせながら、微笑む。

「そうなのかな。アイナ王が呼び止めたとあれば、御心配なのかな?」
私は苦笑しつつ、少々冗談まがいの事を言ってみた。ユリィは、驚いた顔をする。とんでもない、と前のめりに成りながら話す。

「そんな事はありません。エル様は王になる器の御方です。こんなところで負ける筈ありません。」

「そんなことは・・・」
そう続けたかったが、ユリィが話を被せてくる。

「そうなのです。私が、そう感じました。・・・しかし、初陣にお付添い出来ず、このような事を言うのはおかしいですね。」
先ほどまでの勢いが、急に萎んでいく。頭を項垂れ、その身体が小さく見える。申し訳ない、その気持ちがひしひしと伝わってくる。
修道騎士であるユリィが、私の初陣に参加しないのは当たり前だ。修道騎士の行動指針は、アイナェル教、神殿、王が基本となる。王でもなく、ただの王位継承権第3位の王子に付き従う事は出来ない。特例として、王太子には付き従う事が出来るらしいが。
彼女は、急に膝をついて頭を垂れた。・・・それは、王に対して行う最大の礼。

「エル王子、今は御供する事は叶いません。ですが、必ずや、エル様がその地位に叙される時は、我々、アイナェル神殿修道騎士がそのお力になります。必ずや・・・」
そう言って、彼女は顔を挙げた。その顔は、強い“決意”が感じられる。それは、何にも揺れる事のないもの。その蒼玉の瞳は、眩く輝いている。そして、もう一度、頭を垂れて言葉を口にした。

「・・・御旗のもとに。」



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アトゥス王国暦358年4月21日 昼
アンデル地方 シャフラス 兵練場
王子 エル・シュトラディール



 ここ、兵練場は、シャフラスの街の北外れにある。その区画は3つに分かれており、1つ目は、兵士が衣食住をする兵舎。2つ目は、個々の兵士や、少数での訓練で使われる木の柵で囲われた練習場、そして3つ目は、大規模な軍事行動の練習の為に開けた場所を設定している演習場、これら3つを合わせて兵練場と呼んでいる。兵練場の横には、アトゥス軍の騎馬がいる厩舎が併設されている。
かつて、アトゥス軍は、栄華を誇った時代に「アトゥスの騎兵」と恐れられていた。その騎兵は強く、速く、何人にも止める事は叶わなかった
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