第四章
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「いやいや、これで終わりではないぞ」
礼を述べる周吉とおたみに対してまた言ってきた。
「御主達の子供じゃが」
「うちの子が何か」
「男の子じゃったな」
「ええ、まあ」
周吉は雷神に答える。答えながら言うのだった。
「ならば話が早い。それでは」
子供の方を見てバチを取り出す。そうしてまた雷を放って周吉達の子供に対して当てたのだった。
「雷をですか」
「うむ、子供に千人力を与えた」
胸を張ってそう告げる。また満足そうな顔をしていた。
「将来は必ずや力士になり名を馳せるであろう」
「力士ですか」
「とにかく力は千人力、きっと役に立つ」
力強い声で述べる。述べながらじっと子供を見ている。
「これが褒美じゃ。というよりは御礼じゃな」
「何か凄いものを二つも貰いまして」
「何と言えばいいか」
「よいよい」
雷神は笑ってそう返す。
「全ては礼じゃ。気にすることではない」
「左様ですか」
「うむ。この子供のこれからを空から見守っておるぞ。さて」
ここでその空を見上げた。何時の間にか雨が止んで晴れようとしていた。
「わしは帰るとしよう。それではな」
「ええ」
「ではお元気で」
「最初はどうなるかと思ったが。よくしてもらった」
雷神は二人を見てにこりと笑った。こうして見れば実にいい顔である。愛嬌があって悪いものはそこにはない。
「それではな」
雷神はすうっと上にあがってそのまま空に消えていく。空に消えると暫くして雷鳴が聞こえて黄色い光が空に見えた。それが別れの挨拶になった。
周吉とおたみの村は豊作で沸くようになった。二人の子供は力士として大成し江戸で知らぬ者がない程にまでなった。それが雷神のおかげであることは広く知られ村では長い間雷神が信仰された。
雷神 完
2007・4・10
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